第5話 《from ラブイズ》5

「…ひょっとしたらキキョウさん、育児ノイローゼの気があるかも知れないです…」

「育児ノイローゼ…ですか…?」

正直、心療内科という選択は考えもしなかった。今になれば早く行けば良かったと思うが、当時は何をどうすればいいか全く分からなかった。

話を聞くとキタさんは最近キキョウの具合が悪いため、ちょくちょく電話等をして様子を見てくれていたようだった。
ここ数日が特におかしかったみたいで、このまま放っておくと虐待の可能性も出てくるかも知れないと脅かされた。

…なんだそれは?

とりあえずキキョウに電話を代わった。

受話器に向かってむせび泣くキキョウ。

おもわずその場にいたアイハを抱き締めた。

(…この子を…傷つけられないな…)

「…話し聞いた?」

「うん…」

「病院行ってみようか?」

「…………うん…自分では良くわからなくなっていて…でも、この体調が病気のせいなら私も治りたいから…

…行ってみる」

「よし、わかった」

すぐにキタさんに近くの心療内科を紹介してもらい、診察に行った。

(育児ノイローゼってあるんだな)等と思いながら、アイハと二人でキキョウを待った。

「ご主人さんどうぞ」

奥に呼ばれると不安そうな顔をしたキキョウがいた。

「はじめまして、この度は大変でしたね」
優しそうな40代位の女医さんだ。

「さっそくですが、ご主人さん。
まだ診断の結果は出てないのですが、奥さんはPTSDの疑いがあるかも知れません。」

「ピィティエスディ…?ですか?」

「はい、詳しくは調べてみないとわからないのですが、PTSDとは『心的外傷ストレス障害』と言います。
つまり、そうですねぇ…

例えば車で大きな事故を起こした人が、トラウマになって車に乗るのが怖くて乗れなくなったりとか、
戦場に行った方が夜に思い出してうなされるとか、
ショックの大きい出来事にあった事がトラウマになって、その後の生活に支障をきたす事…
ですね」

「…?
それが何か?」

「つまり、奥さんは幼い頃に何かしらあった出来事が原因で今、育児が出来なくなっているのだと思います」

「?育児ノイローゼじゃないんですか?」

「えぇ、厳密に言えば違うんです。
とりあえずまた来週こちらにおいで下さい。それまでに診断の結果が出てますので。

お大事になさって下さいね」

その日は精神安定剤を処方されただけだった。

from ラブイズ

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