第6話 《from ラブイズ》6

そして次の週、キキョウとアイハを連れてまた心療内科へ行った。

しばらくのカウンセリングの後、奥へ呼ばれる。

「…やはり、キキョウさんはPTSDの気があります。多分原因は幼児期の不安によるものだと思います」

「?…不安?」

「はい、小さい頃キキョウさんのお母様は他界されていたそうですね」

「…はい」

その話は付き合っている時にキキョウから聞いていた。
キキョウの母親はキキョウが3歳のときに亡くなっていた。
お父さんは仕事がちで親戚の家に預けられてすごく淋しい想いをしたようだった。

付き合いたての当初にそう話してくれたことがあった。

…でも不安って?

「……キキョウさんは父親から精神的な虐待…ネグレストを受けていたようです」

「ネグレスト…」

「育児放棄のことです」

「!」

どう形容したらいいだろうか?
ただただびっくりした。
そんなドラマみたいな話、本当ににあるのかと思った。

「…また、それで父親がいなくなるかも知れないという著しい不安が幼児期にあったようです。

娘さんが3歳となり、自分でもわからないうちにそれが思い出され、強いストレスとなり、体が動かなくなった…つまり『抑鬱状態』になってしまったようです」

…そんな事突然言われても上手く整理出来なかった。

それよりも聞きたい事は一つだった。

「そうしたら…妻はどうしたら治るんですか?」

…となりでキキョウは涙目になりながらじっとしていた。

「まずはキキョウさんとお子さんを離した方がいいと思います。その上で一度、キキョウさんを解放させて、そこからですね…」

「???」
解放とか、子供から離すとか段々訳分からなくなってくる。

「…つまり、キキョウさんは幼い時から性格のある一部分が成長しきれていないんです。
そこが原因で体調を崩されてますので、一度お子さんとは距離をおいて、少し休ませてあげた方がいいと思います…。とりあえずいったんお家の方で相談されてみて下さい」

「はぁ…でも子供はどうしたらいいんでしょうか?」

「ですから、お母さんに見てもらうなり、預けるなりですね…」

「…………簡単に言いますけど、それってすごく大変な事ですよね…!
いきなり預かってくれるとか、離すとか、なんとか…!」

「私のせいで怒らないで!」
わっ!と泣き出すキキョウ。

いくつかの病院を子連れで渡り歩き、ようやく出た答えがこれだ。

なおかつ簡単にこれまでと違う生活になりそうだという不安や怒りや失望が一度に溢れ出してしまった。

だけど、それはキキョウも一緒のはず。
いや、本当に辛いのはキキョウの方だ。
しかし私は、自分の生活に対する変化の事を重く考えていた。

…怖かった。

「……実際に先生はどうするのがベストだと考えているのですか…?」

「ご主人の気持ちもわかりますよ。
私が今考えているのは入院などして一度完全にお子さんと隔離された方がよろしいかと思います」

「にゅ、入院ですか…!?」

「入院…」
キキョウも疲れた顔をしていた。

「…とりあえず今日のところは帰ります…家族で色々話し合ってみます…」

「わかりました。お薬は一応一週間分出しておきますので、何かあったらすぐにおいでなさって下さい。お大事に」

(キキョウが精神病…)

頭の中が台風になり、物凄いスピードで色々な思い想いが駆け巡る。

この日を境に私の心が落ち着くことは無かった。

from ラブイズ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーリンク

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。