第15話 《from ラブイズ》15

「…それは大変でしたね。さぁさぁどうぞ」

ガタイの良い熊の様な先生。

キキョウと一緒に奥の部屋へ入っていった。

一時間後。
奥の部屋から目を真っ赤にしてキキョウが出てきた。

そしてキキョウと二人で先生の話を聞いた。

「結局、妻はどうなんですか先生!?病気なんですか?治るんですか!?」

「…まぁまぁご主人さん落ち着いて下さい。
一つずつ話していきましょうか。

まず、奥さんは病気です。
病名は『境界性人格障害』と言います。
神経症と統合失調症…あ、前は精神分裂病と言いましたが、それを行ったり来たりする病気です。
症状としましては、鬱、自傷行為、思考能力の低下、性が奔放になる、身体の運動機能の低下のいくつかのものが現れてきます。
でも、奥さんは治りますよ。大丈夫です。

…ただ、十年下さい。
時間はかかりますが十年も経てばだいぶ良くなりますから」

『良くなる』

本当は一生このままかも知れないと思っていた私にとってこの言葉は嘘だとしても嬉しかった。

すごく、
すごく嬉しかった。

恥ずかしいと我慢していた涙が堪えきれなくて少し溢れ落ちた。

「…ご主人さん。ただ先程も話した通り、時間はかかります。治療はですね、まず、奥さんを家族から完璧に離す時間を作ります。
当院の二階フロアでディケアを開いておりますので、しばらくは毎日通って下さい。
そして、徐々に家族の枠に戻して行き、社会に適応出来る様にしていきます」

初めてのそれらしい治療。
ここなら本当に治るかも知れない。

スタッフと一緒に二階フロアへキキョウと行った。

………
独特の雰囲気だった…
差別するワケではないが、個性的な方が多い。

目が…飛んでる。焦点の合ってない人がほとんどだ。
もしくは目に生気を感じない。

本当にこんなところに妻を預けるのか!?

…心配になった。

しかし、先生を信じると決めたばかり。

断腸の思いでディケアに妻を預ける事にした。
その日はそのまま二時間一緒にディケアを参加した。

内容は基本的に自由。

なんだか色々なカリキュラムがあり、粘土細工をしたり、カラオケをしたり、ビーズアクセサリーを作ったり…等々。
辛いと休んだり、同じような人達と同じ時間を過ごす事がまずは大事らしい。

キキョウも同じ病気の人と色々な話をしていた。
…そうか…キキョウが『母』という時間を離れ自分を自由に解放するにはいいかも知れない。

いくら病気で身体が動かないといってもやはり3歳児の母親。アイハも寂しいとなついてくるし、病気といえどいきなり危害を加える事はなく、むしろそれなりに抱きしめたり、遊んでやらなくてはならない。

しかも病気だからといって、私の実家に住むという事はキキョウにとっても苦痛だろう。
昼間子供達が保育園に行くと母とキキョウの二人きりなのだから。

しかし、それにしても妻をここへ預けるのは、ひどく気詰まりした。

一言でいえば、『大人の皮を被った中学生軍団』といった感じだ。

しかしまずは先生を信じるしかない。

他の病気の方と談笑するキキョウを見て、『やっぱりキキョウも病気なんだ』と感じた。

そして改めて寂しさを感じた。

from ラブイズ

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