第16話 《from ラブイズ》16

ディケアに通う様になってから段々と幼児化が進むキキョウ。

サイトウ先生が言うには、キキョウは9歳から感情の成長していない部分があるらしい。

父親の育児放棄により植え付けられた『寂しい』という認識。

何も構ってくれなかった、守ってもくれなかった父。

それでもキキョウは両親に愛されたかった。

結婚相手に求めた愛情。
仕事が忙しく、相手をしてくれない。

私達の為に頑張っているのは分かる。

けど寂しい。
寂しい。
寂しい…。
なのに娘は私が受けられなかった愛情。
私が受けたかった愛情を一身に受けている。

あんなに望んだのに私じゃなく娘に注がれる愛情。

―『憎い』

自分自身気が付かなかった感情。

段々とキキョウの中で膨らんでくる。

お腹を痛めて産んだ子供。

憎いはずがない。

でも憎い。

そしてキキョウはそれを知るよしもない。

その影響は身体に出てきた。

身体が育児に拒否反応を示す。

…という事らしい。

まずそれを『解放』させるのが必要との事。

そして、境界性人格障害という病気の特徴は、一言で言うと『ワガママ病』なんだという。

みんなそれぞれ辛い想いをして成長してきているし、それを乗り越えて大人になる。

でも、それを乗り越えられなくなってしまうのだ。

自分でも気の付かないうちに。

意識ないワガママで許されるのは赤ん坊だけだ。
キキョウも一度、赤ん坊まで解放させる。

しかし、身体は大人なものだから、性に奔放になってしまう人が多いらしい。

それが離婚率90%を超えるという理由の一つになっているそうだ。

医師自ら誘惑するらしい。それである程度判断出来るとのこと。

「奥さんは怪訝そうな顔をしていました。まあ大丈夫ですよ」

そしてキキョウは毎日ディケアに通った。

段々不良女子中学生のようになっていくキキョウ。

汚い言葉遣い。
タバコ。
育児放棄。
濃い化粧。
露出の多い服。

病気だし、仕方ないと思った。
ただ正直恥ずかしかった。

お洒落をしたいみたいだけど周りの友達の影響かちょっとズレている感じだ。

しばらくして、携帯電話が欲しいという。

当時家にいたキキョウは携帯電話を持っていなかった。しかし実家に住む様になり自由に友達と連絡がとれないとの事で契約する事にした。

キキョウは喜んだ。
ここ最近無い程のテンションだった。

そしてその日から部屋からほとんどでて来なくなり、引き籠りになった。
何やら精神病の友達と話したり、メールなどでやりとりをしているみたいだった。

そんなことで落ち着くなら…としばらく放っておいた。

半月後…
初めての利用料金が来た。
家賃半月分。

単純計算で月家賃一月分だ。

これでは生活が成り立たなくなる。

私はキキョウに激怒した。

「どうやって生活していくつもりなんだ!?」

「イヤァアアァァッ!!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!もう気をつけるから!ごめんなさい!ごめんなさい!」

許されないと思った。

そんな爆弾を抱えて、とてもじゃないけれども生活していけない。

あまりに腹がたってキキョウの携帯まっぷたつに折ってやった。

「ギャ―――――――ッ!!!!!!〆〇ゞ★£*※∋∨⌒∽ゐΘΩΦЁЙйы┫?
??√∵!!!!!!」

狂った。

刹那、キキョウは私の眼鏡を掴み取り、まっぷたつに折った。そしてその眼鏡を床に叩きつけると勢いよく殴りかかってきた。

私はなんとかキキョウを掴み静止させる。

般若のような顔のキキョウ。

凄く私を恨む顔。睨む顔。殺意な顔。


……
………
…………
……………

…私は自分の家族を守りたいだけだ。

だけどキキョウに声は届かない。

私が間違っているのか?!

いや、彼女がオカシイんだ。

こんな事がずっと続くのか?!

本気で
『キキョウと一緒に自殺したい』
そう思った。

もう訳がわからなくなっていた。

多分そんな様な事をくちばしったのだろう。

その時頬に衝撃が走った。
その場にいた母親に頬を叩かれていた。

「アイハはどうするの!!!あんたまでそんなになったらダメでしょうっ!!!」

ハッとした。

気が付かないうちからずっと泣いていた。

キキョウはまた心因反応を起こしてビクッビクッと痙攣していた。

後日、ディケアのスタッフに携帯電話を壊した事について、「もっと優しくできませんか?」という問い合わせがあった。
おそらくキキョウが言いつけたのだろう。

「じゃあ、どうやって生活するんですか!!」
と私は怒鳴った。

するとディケアのスタッフの黙ってしまった。

そしてまことしやかに私に対するドメステイック・バイオレンス疑惑が浮上する。

段々とキキョウに追い込まれていく生活が始まった。

from ラブイズ

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