第17話 《from ラブイズ》17

そんな生活が続き、母親が先に参ってきた。

私が仕事に出ている間、精神病のキキョウとアイハの世話。

私は朝6:40に出社して夜23:30に帰宅。

朝から晩まで私の家族に付きっきりである。

ただでさえ、気の滅いる精神病患者との付き合い。

娘ならまだしも『嫁』。

キキョウも普通時は母には気を遣っているが、いかんせんおかしくなれば手に負えない。

母から私への愚痴が日増しに増える。

…仕方ない事。

それは母も私もお互い分かっていた。

しかし、想像を超える辛さだったろうと思う。
息子と精神病の嫁と三歳の孫の面倒を見るのは。

そんなある日、キキョウは遂にアレを実行した。
『リストカット』

仕事中昼に母親から電話が来た。

「ラブイズ!キキョウが手首切ったよ!アイハもいるしちょっと帰ってきなさい!」

…遂に来た。という感じだった。

キキョウは病気になってから手首を安全ピンでよく刺していた。

サイトウ先生には言われていた。
「これから多分自傷行為も出てくるでしょう」と

話にはよく聞く。

でも実際に『やった』と聞くと何とも言えない嫌な気分になる。

初めてのリストカットは驚きと不安ですぐに病院へ向かった。

6針縫ったらしい。

左手がぐるぐる包帯に巻かれながら点滴を打つ放心状態のキキョウがいた。

バカヤロウ。
心の中で呟いた。

キキョウは私を見つけると「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」と壊れたラジカセのように繰り返す。

「…ああ、もういいよ。命があって良かったよ。もうするなよ。絶対だぞ!」

「…うん」

あと2時間は点滴にかかるとのことだった。

その間、家に帰って部屋中の刃物やガラスを手の届かない場所へ隠した。
そしてキキョウの点滴の終わる前にサイトウ先生と面談をした。

「刃物全部隠しましたか、ハッハッハ」

笑いやがった。

こっちは真剣なのに。

人の命がかかっているのに。

先生の答えは以外だった。
「死ぬ気なんてないんですよ」

!?

辛いから死にたくてやるのではないのか?

「寂しいんです。注意をひきたいが為の衝動です。そして血を見ると安心するという衝動もあります」

理解不能だった。

何で!?と思ったがそうらしい。

そして結局止めるすべはないとの事。

「刃物を持って子供に切りかかったらどうするのですか?」

「自傷行為なので自分を傷つけるだけです」

「私、殴られたりしていますが先生…」

それは別。
との事。

訳がわからなかった。

ますます壊れてくるキキョウ。
そして先生のいう通り、キキョウは自傷行為を続けていく事となる。

実際母はかなり限界のように見えた。

そんな時、先生から一つ提案が持ち掛けられた。
「奥さんを一人暮らしさせる事は出来ないか?」と。

新しい部屋を借りなくてはならないと思っていた矢先の提案だった。

まずは子供と完璧に離す時間を作り一人で生活をしてリズムを作るというカリキュラムだそうだ。
相変わらず人の財布をかえりみない話だったが、キキョウと母と私の三人で話し合いそれを決めた。

丁度、実家からスープの冷めない距離のアパートで一人暮らし用のところがあった。

キキョウを一人暮らしさせる不安もあったが、母と私とアイハとキキョウがうまく生活を営む為に他に良い方法が見つからなかった。

週末はなるべく家族でいる約束をした。

そしてキキョウと別居する事となった。

from ラブイズ

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