第24話 《from ラブイズ》24

ある時、3人で近所にあるドーナッツ屋さんへに行った。

家族団欒で楽しいおやつ。

アイハはもちろん大喜びだ。
「ねぇねぇ!ままはなににするのー?アイハおれんじじゅーすにする!」
嬉しそうなアイハを横にキキョウはコーヒーをすすりながらタバコをふかしている…

…ちょっぴりブルーになりながらも、おいしいおやつを楽しんでいた矢先にキキョウがとんでもない事をしでかした。

横に置いていた使っていない灰皿を…
ス…スス…
…ストン。

自分のバッグに入れたのである!

驚愕した!

万引き!?

あり得ない!普通にあり得ない!
しかも子供のいる隣で!?

…この時ばかりは一瞬離婚が頭によぎった。

無言でキキョウを睨みつける…
…1…2…3…4…5秒

ハッ!とキキョウが私に気付いた。

顔を横に振る私。

怯えるキキョウはそっと灰皿をバッグの中から取り出して、元の場所に置いた。
…私の怒りは収まらなかった。

…帰り際、車に乗り込もうとするキキョウを引きずり下ろした。

「!!ごめんなさい!ごめんなさい!」

許せなかった。
アイハを車に乗せてから、キキョウを物陰に連れていった。

相変わらず、キキョウは「ごめんなさい!ごめんなさい!」と泣いている。

「…キキョウ…なんであんな事したんだ…」

「ごめんなさい!ごめんなさい!」

「…ごめんなさいじゃない!なんでしたんだって聞いてるんだよ!!」

「…欲しかったから…もうしないから!ごめんなさい!ごめんなさい!」

「欲しかったって…!灰皿なんて売っているだろうッ!!アイハが気付いたらどう思うんだッ!!」

「ごめんなさい!!ごめんなさい!!」

「だから、ごめんなさいじゃないッ!!いいか!?これ作って売って生活している人だっているんだ!
しかもそんなもの!私がそんなに金で君に苦労させていたか!?」

「ごめんなさい!もうしません!もうしません!」

「当たり前だ!!しかも、子供の隣で何て事するんだ!君はアイハが万引きしたらなんて言うつもりだ!」

「わああぁっ!!ごめんなさい!ごめんなさい!もう許して!もう許して!」

「許さない!!
いいか!万引きは絶対にしてはダメだ!!
分かったか!!」

「わあぁあん!!分かったぁ!ごめんなさい!ごめんなさい!」

「分かったら今日は歩いて帰るんだッ!それで反省しなさい!!」

「うわぁぁあん!ごめんなさい!もう許して!一緒に帰らせてぇ!!」

「ダメだ!」

キキョウを突き放し、アイハと車で帰る。歩いても10〜15分程だ。

「…ねぇままは?」

「ママは悪い事をしたからパパは歩いて帰らせました」

「…なにしたの?」

「…アイハが大人になったら教えてあげるよ…」

「まま…だいじょうぶかなぁ…」
…………

帰宅して数分後、キキョウが帰って来た。
バタン!

ドタン!
力いっぱい戸を閉めて不機嫌をアピール。もちろん晩御飯なんて作らない。
ほぼ毎週、休みにご飯は私が作っていた。

平日は母が作ってくれた。

キキョウがご飯を作るのは調子のよい時だけだった。
…しばらくして隣の部屋に様子を見に行くと、またこっそりリストカットをしていた。

いつもさりげなく刃物を手に入れるキキョウ。
いつもの様に消毒液をかけて包帯を巻く。
今日は深くないから大丈夫。
泣きながら寝てしまったようだ。
夜、アイハを実家に送ってからキキョウの部屋に戻るとキキョウは静かにタバコをふかしていた。

「…反省したかい…?」

「…うん…ごめんなさい…」

「もういいよ。絶対にもうするなよ」

「…うん…ごめんなさい」

「…もう、いいよ」

後にも先にもキキョウが目の前で万引きをしたのはこの一回だけだった。

from ラブイズ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーリンク

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。