第51話 《from ラブイズ》51

キキョウの受診が明日の夕方の為、アイハを病院に連れて行くという話になっていた。
ずっと待っているのも退屈だよとアイハに伝えたところ、キキョウにどうしても受診に付き添いたいと言ったらしい。

そのうち、受診の時間に間に合わないかも知れないとの事で、アイハを早退させて一緒に病院に行くと言ったところで母は反対した。

私に「アイハはこんなに行きたいと言っているし、私はそんなにアイハが行きたいと言うならいいと思った。どう思う?」的な事を聞くキキョウ。アイハには珍しくおばあちゃんに反抗してまでママに付き添いたいと言ったらしい。そして、キキョウはそれが嬉しかったようだ。

私はキキョウに「学校を早退してまで行くべきではない」と伝えた。

みるみるうちにキキョウの顔色が変わる。しかし私は続けた。

「例えば、事故にあって危篤だとか緊急の場合は話は違ってくるだろうけど、ただ母親の受診の為に早退させるのは今後の事を考えても良くないと思う」と。

すると「アイハはこんなに行きたいと言っているのに…」と睨んでくる。
私はその時、以前アイハが言った言葉を思い出した。
アイハは「今までパパのいう通りおばあちゃんの家にいたから、今度はママといてあげたい。」と言った。

アイハは自分のわがままだけで物を言う子ではない。

おそらく今回もキキョウの為だと思ってそこまで言ったのだと思う。

キキョウにそれを伝えると「アンタはいつもそうだ」と激しく私を睨む。そして私と私の家族への人格否定がはじまる。

私は「今はアイハの話をしているのだから、アイハの事についての話をしよう」と言っても止まらない。スイッチが入ったのだ。

私は自分や家族を否定されるのが非常に辛いのと、あなたが睨むその目が恐いと、そして、あなたが傷つくように私も傷ついている旨を伝えてみたが、怒りは一向におさまらない様子だ。

仕方ないのでお風呂に入る事を伝えてお風呂に入る途中で「アイハ!荷物の用意しな!!」と努声が聞こえた。それを無視してお風呂に入っていると、突然浴室の戸を殴った。

バキャン!!とすごい音がして、浴室の戸の不透明なプラスチックが割れた。浴室に破片が飛び込む。

「もう止めて」と言うと、電気を全て消されて不機嫌な足音で居間へ向かいタバコに火を付ける音が聞こえた。

お風呂から上がり、「何でそんな事をするのか?」と聞いても無視してタバコを吸い続けている。
今日はもう寝ようと思い、ベッドに向かうと子供部屋に佇んでいたキキョウ。

ベッドに入ろうとすると、突然電気をつけられて、ベッド脇の窓を開けて飛び下りる仕草をする。今日は無視出来ない。無視すると衝動的に飛び下りてしまうからだ。

「こんなところから落ちても死なないと思ってるんでしょう!!」と努声を浴びせる。冷静に見ている私が気に入らないようだ。この時夜の11:00過ぎだった。

「アイハがここら辺に住めなくなるから止めなさい」の言葉に渋々窓を閉める。
「今日はもう寝かせてくれ」と言ったが「寝かせない!!」と睨み、怒鳴られる。
疲れているので正直もう休みたいという衝動もあり、外に出ようとしたが制止される。「何がしたいの?」と聞くと、「アンタばっかり好きな事いいやがって私の話も聞かないで」と言うので「じゃあ話を聞くよ。」と黙ってキキョウの顔をみる。

キキョウは十年も前の話から現在に至るまでの私や私の家族の悪かった点の話をして、自分はいかに悲劇のヒロインかを途切れ途切れに熱く語り続ける。

延々と
延々と続く私と私の家族に対する人格否定。

小一時間くらい黙って話を聞いていたのだが、突然怒りの沸点が頂点を超えた。

「そんなに悪い人間なら私が死ねばいいんだな?わかった」と階段を駆け降りると、それはまずいと思ったのか止めに入るキキョウ。

そしてキキョウは笑いだす。そう、いつも冷静な私が、この人は気に入らないのだ。そうやって私の怒った姿をみて、おそらく「私と同じだ」とそこに心を依存させるのだ。

笑いながらタバコに手を伸ばすキキョウ。
しかし私だって聖人君子ではない。

怒りはおさまらない。

吸おうとしているタバコを全て投げ飛ばす。「いい加減にしろ…」と。

アイハが気になってちょくちょく起きてくる。

私は本気で怒っているのを察して「寝なさい」の一言で大人しく部屋へ戻る。

キキョウに「君はやり過ぎたよ」と本気で伝えると、「ごめんなさい」と謝ってきた。怒りがおさまらないので起きてきたアイハとキキョウに「もう寝なさい」支持を出して自分は一階のソファで横になった。

怒りが安眠を邪魔していたが、少したって寝そうになったところ、足下でゴソゴソ聞こえる。

キキョウ。戸棚の下を何かゴソゴソ漁っていた。
あまりの睡眠妨害に腹が立ち、隣の玄関に突きだした。最早半分意識は無かった。
そして朝方、キキョウは自転車に乗ってタバコを買いに行ったようだ。

怒りはおさまらない。

アイハの教育の為にも彼女のタバコを捨て続けようと思った。

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