第29話 《from ラブイズ》29

新しい家での新しい生活が始まった。

久しぶりの家族水入らずの生活。

少しずつ家事をはじめるキキョウ。

少しずつ。

少しずつ…

寝込む日が続いたり、家事が出来る日が続いたり…
それでも一生懸命、少しずつ、少しずつ頑張っていた。

…そんなある日、朝起きるとキキョウの姿がそこにあった。

いつもなら私が家を出る時に起きるか起きないかのキキョウ。
少しびっくりしていると、
「はい!お弁当」

満面の笑みで弁当を手渡してくれた。

…ずっと食べれなかったキキョウのお弁当。

二年ぶりのキキョウのお弁当。

目の前のキキョウの顔が段々歪んでいった。

嬉しかった。

涙が止まらなかった。

「…久しぶりだからおいしくないかも知れないけど…えへへ…お仕事頑張ってね!」

そう言って恥ずかしそうにコーヒーを入れるキキョウ。

「…ありがとう…」

そう言うのが精一杯だった。

顔を洗い、スーツに着替えて、髪を整える。

いつもの朝の時間が始まった。
テーブルには新聞とトーストとコーヒーが用意されてあった。

慌ただしくトーストを口に入れ新聞に目を通す。
…あぁ、仕事に出る時間だ。

…財布と携帯電話と車のキーと
お弁当。

「行って来るね」

「いってらっしゃい。気をつけてね」

二年前と変わらないキキョウがそこにいた。

久しぶりだった。

会社に向かう足取りが軽かった事!

―お昼

弁当を広げると手紙が出てきた。

開けると、丁寧な文字でこう書いてあった。

『いつもこんな私を支えてくれてありがとう。
そしていつも迷惑ばかりでごめんなさい。
少しずつあなたの助けになるように頑張ります。
いつも本当にありがとう。
キキョウ』

…お弁当の味は少ししょっぱい感じがした。

そして顔はずっとニヤけていた。
ニヤけながら涙が止まらなかった。

from ラブイズ

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