第86話 《キキョウ》1

「わぁ!今日はすっごいいい天気!ママ見てー!」

「…はぁ、あなたはいつも元気ねアイハ」

「また溜め息ついてる!大丈夫大丈夫!パパにはわたしがついているんだから!今日だってほら、太陽だって祝福してるじゃない!」

「まぁそうね。あなたを見ているとなんだかそう思ってくるわね」

「ママだってたくさん悩んだんだから大丈夫!うまくいくわ!あ!パパの為のお花を買ってくるね!行ってきまーす!」

「あ!ついでに牛乳もお願いー」

「ぁぃ-」
もう扉の向こうにいるアイハの声が聞こえる。

「…もう、本当に誰に似たのかしら?ねぇラブイズ」

私は彼の写真に話し掛ける。

今日は彼が例の機械に入る日。

これまでサイトウ博士と何度も何度も話をさせてもらった。

『心配は山ほどある』と博士は言った。
そして
『それでもきっとラブイズならやってくれる』とも言ってくれた。

私の心配をよそに、博士の目には科学者としての顔もあったことを私は感じてしまった。

彼の仕事のことはわからないけれども、彼と博士のした仕事が一つの決着をつけようとしている様子はわかる。

わかるけど、、、

私は彼が心配。

これを『愛』と呼ぶのかは私もわからない。

だけど、彼を想うとなんだか胸が苦しくなる。

彼の苦悩を一つでも私が代わってあげたいと思う。

アイハはいつも元気。

ただあの子も気丈に振る舞っているように見える。

いつもあの子は『パパもママも考えすぎなのよ』と言う。

正直あの子の明るさには救われている。

ラブイズ…

私にはあなたの苦悩はわからない。

わからないのが辛い。

あの子は『わからないのは辛くない!わからないのが辛いというママを見るのがわたしが辛い。だからわからなくていいの』と言う。

エキセントリックに聞こえるあの子の言葉に何か真実めいたものを感じるのはおかしいのかしら。

ねぇ、ラブイズ…

どんなあなたでもいいの。

これは私のわがままなんだけど、出来るならまた3人で笑い合える生活に戻りたい…

今はあの子があなたと私の分まで笑ってくれている。

普通の家庭を歩ませることの出来なかったアイハに悪いと思っているわ。

それを相談するあなたがいないのが寂しい。

あなたがいないと思うことが寂しい。
ラブイズ…あなたは今日旅立つのかも知れない。

あなたが決めた人生なら、私はそれを応援します。

ただ、あなたがまた笑顔になれることを、
心から祈っています。

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