第90話 《キキョウ》5

そして彼と一緒にいる方法をたくさん考えた。

時に不安定になり、暴力や暴言を振るう彼とは一緒にいることが出来ないのは明白だった。

適切な距離を取るのなら今の環境がいいと思う。

だけど私は彼と一緒に暮らしたい。

彼と一緒にアイハを見守っていきたい。

その為にはー

…どうしたらいいんだろう。

彼は突然に出ていっていなくなってしまう。

例え鎖で繋ぎ止めたとしても心までは繋ぎ止められない。

良い時だってあった。

いや過去を振り返るのは止めよう。

これからどうするかだ。

これからどうするか…
…彼との生活はこれからも自殺未遂と隣り合わせで生きていかなければならない。

それは病気を受け入れるということだろうか?

そもそも彼は苦しんでいる。

それを抱えたままでいいのだろうか?

時が解決してくれるのだろうか?

ほんの一瞬でも穏やかな時が過ごせればいいのだろうか?

そうなるとこれは私の問題となる。

ただ、アイハには我慢させたくない。
父親の不安定な姿を見せたくない。

それは無理な理想なのだろうか?

それを求める私がエゴイストなんだろうか?

私が私の求める幸せを描いてはいけないのだろうか?

あぁ、いけない。
考えが堂々巡りになる。

私は私の求める幸せを描いてはいけないのかな…

いや、そんなことはないと思う。

きっと人生の“過渡期”っていうものなんだと思う。

私の求める幸せを、私は求める権利があると思う。

私は私が幸せになる権利があると思う。

その一つの方法が離婚という解決なだけだと思う。

離婚の定義やその有効性は今はどうでもいい!

私は彼と一緒に居たいんだから。
一つ一つ

ほどいていこう。

彼は幼い頃に母親に見捨てられた。

それがトラウマになり、私がアイハを可愛がる姿が彼にとって精神的苦痛になっていたのがはじまりだった。

だから幼い彼の心を育む為に
一人暮らしをさせたり、
ディケアに行かせたりもした。

ところが心の不安定は増すばかりだった…
彼の心の不安定が
育児放棄や家庭放棄、
リストカットやOD、
不貞行為や万引き、
暴力や暴言の引き金となった。

その根本は『不安』によるものだと思う。

でも不安を取り除くには、彼と彼の母親が、最初からの適切な関係を築くことが必要だ。

うん。そうか。

機械に入ることで、最初の記憶からやり直すことが出来るならいいかも知れない。

だけど…
彼がもし目覚めることが無かったら…

もし目覚めても変わっていなかったら…

…まずもう一度、博士と話をしてみよう。

もう私は迷わないから、
きっと何か方法はあるはずだから…

そしてすぐに博士にメールをした。

返信はすぐに来た。

明日の朝一で会ってくれるらしい。

…その日は遅くまで寝付くことが出来なかった。

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