第100話 《キキョウ》15

「…ようやく寝付いたよ。
アイハよっぽど楽しかったようだね。寝る間際までずっとあなたと話した内容を話してたよ」

「君もお疲れ様。今日は楽しかったね」

「あなたこそ疲れたでしょう?今日は泊まっていけるの?」

「あぁ…うん。泊まっていこうかな…」

「だいぶ疲れちゃった?もう寝る?」

「いや…まだ大丈夫だよ…キキョウ」

「なぁにラブイズ?」

「今まで本当に有難う」

「やだ…何言ってるの…?」

「いや…今日、伝えておこうと思って…」

「帰って…来るんでしょう?」

「そうだ…約束したからな…
でも…現実はわからない…だから…」

「必ず帰って来て」

「あ…いや…だから…」

「必ず帰って来て!」

「あ…はい…」

「ぜっったい帰って来ないと許さないんだからッ!」

「…キキョウ…」

「…許さないんだもん…許さないんだもん…」

仁王立ちのまま、顔を上げずに彼に言い放った。

涙が床に音を立てて落ちていった。

「…約束…したもん…!約束…したもん…!」

「…キキョウ…」

彼は立ち上がって、私を優しく抱き締めてくれた。

「…うぅ…ぇぇぇぇん…ぅぇぇぇぇん…ぅぇぇ…ぇぇん…ぅぇぇぇ…ぇん…」

彼の匂い
彼の体温
彼の息遣い

全部、全部これで最後かも知れないなんて考えるだけで胸が張り裂けそうだった。

アイハと彼とずっと3人で一緒に居たかった。
ずっと彼と二人でアイハを見守っていきたかった。
家族の生活を、
今日みたいな幸せな家族の生活を、
ずっとずっとしていたかった。

彼がいなくなるなんて嫌だった。

彼がいなくなるなんて嫌だった。
「…キキョウ…ごめんな…」

ややしばらく私は彼の胸で泣いた。

そうした後、今度は彼が震えだした。

「う…!ぅぅぅぅ…う…!」

見上げると彼も泣いていた。

「ぅ…ぅぅうぅ……う…!」

止めどなく流れ落ちる涙と鼻水と涎となんだかいろんな液体が私の頭に降り注いできた。

「ぐ…ぅぐぐぅ…ぐぐ…ぐ…」

ガタガタ震えながら、彼も私に抱き付いて歯を食い縛りながら泣いていた。

その内二人とも床に座り込んだ。

そしてそうやって、抱き締め合いながら二人でしばらく泣いた。

「ぐ……ぐぐぅ……ぐ…ぐぅ……」
「ぇ…ぇぇん……ぇぇ…ぇぇん…」

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