第102話 《キキョウ》17

翌朝、久しぶりに彼のイビキを堪能した私はいつもより早くに目が覚めた。

外からの寒い空気が入らないように芋虫のように毛布にくるまり丸まって向こうをむいて眠る彼の姿が懐かしく感じた。

いつも私とは反対方向を向いて眠る彼に、朝までくっついて眠りたかった若い私は「なんでこっち向いて寝てくれないの」と聞いたことがあった。

彼は「お互いが顔を合わせて眠ると二酸化炭素濃度が上がる為に酸素の供給がうまくいかずに安眠を妨げる恐れがある」といつもの調子で、結局私の願いは叶えられなかった思い出がある。

そんな彼の背中によくぴったりくっついて気を紛らわしたものだと苦笑した。

彼の為に美味しいコーヒーでも淹れてあげようと思い、キッチンに向かうと眩しいくらい明るい朝日が差し込んでいた。

思わず、ガウンを羽織り玄関の扉を開けた。
清廉とした空気が舞い込んでくる。
その空気を胸一杯吸い込んで外に出ると、朝日が私を煌々と照らし出した。

胸を透くような新鮮な空気と
エネルギーがチャージされるような朝日を浴びて、私の決心は固まった。

…彼を必ずこの世界に呼び覚ますことを

そして、この素晴らしい世界を彼と共に歩むことを。

「…ママ…おはよう…」

振り替えると頭から毛布にくるまりながら眠い目をこするアイハが玄関にいた。

「おはようアイハ。
さぁ!パパの為に美味しい朝ごはんを作らなきゃ!アイハも一緒に作ろっか!」

「う〜ん…パパんとこいく…」

そう言うとアイハはトコトコ彼のところへ行ってしまった。

…ズルイ…
9歳児に嫉妬しながらも、そこが主婦の辛いところだと自分を戒め、彼の大好きなアメリカンサンドを作るべく再度キッチンへ赴いた。

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