第108話 《キキョウ》23

一緒に暮らすようになってすぐに、彼は私を彼の母親に会わせてくれると言った。

大学の施設に住んでいると言う。

今までそんなに近くにいたのに何で会わせてくれなかったのかと聞くと、病気だからと言われた。

何か、難しい顔をして彼は言った。

母親は精神病だということを。
自分は母親が許せなかったということを。
そして今は自我が崩壊してしまっていることを。

彼は苦しんでいる様子だった。

私は彼に「一緒に面倒を見ていこう」と声をかけた。

彼の母に会う前にサイトウ博士を紹介された。

博士は有名人だったから私は知っていたけれども、研究者というのはどこか偏屈な人が多いと偏見を持っていた私はとても緊張した。

初めて会った博士は大きな声で笑いながら私達を祝福してくれた。

私の心配は杞憂に終わった。

そして博士は彼の母の話をしてくれた。

彼の母は昔から精神が不安定だったこと。
彼の父親は誰かわからないこと。
彼が大学に来てから研究対象という名目で施設で過ごしていること。

それだけ言うと博士は「じゃあ会いに行こうか」と私達を連れて施設に赴いた。

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