第112話 《キキョウ》27

その時、ガチャリと戸が開く音がして、彼が博士の部屋へ入ってきた。

フラフラと身体を揺らしながら、どっかりとソファに身体を落とし、それからしばらく頭を抱え、ゆっくりと私の方を向いた。
そして
「すまない」
と一言彼はそう言った。
その目には涙が溢れていた。

私は彼の隣に座り直すと、彼に「一緒にいよう」と言った。

彼はまたしゃくり上げながら泣いた。

博士はずっと彼と私を見つめていた。

それからしばらく彼は普通だったように思える。

ただ、異常なまでに私に甘えるようになった。

二人で居る時に彼は離れることがなかった。

私もそれで良かった。

彼の心の傷を癒している実感に幸せを感じていた。

その内お腹にアイハが宿った。

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