第115話 《キキョウ》30

結婚式の後、父に手紙を書いた。

結婚式の写真と一緒に入れて送った。

父からの返信はなかったけど待っている訳でもなかった。

ただ、私が思う、ありったけの父への愛情を言葉に綴った。

父はなんて思っただろうか。

それからは日々大きくなるお腹を大切にしながら忙しく過ごした。

異国の地で様々な手続きに追われる中での妊娠生活は慌ただしく過ぎ去っていった。

彼は日々大きくなっていく私のお腹を毎日毎日愛しそうに撫でてくれた。

彼も一層仕事に精を出して頑張っていた。
朝早く出掛け、夜中に帰宅してくる彼は頼もしくもあったが寂しさもあった。
つわりが酷くなった時期もあって、彼はなかなか外に出させてくれなかった。

それでも日中時間がある時は大学へ行き、なんとか保育士の資格を手に入れた。
そしてその年の12月12日、陣痛が始まった。

夜7時頃だろうか、なんだか少しずつお腹が痛くなり、これは来たかな?と思った。

夜中に帰宅して来た彼は私より慌て出してなんだかとても可笑しかった。

時折波のように表れる陣痛に脂汗が滲んだ。
もういよいよダメだと思って、夜中に彼を起こして病院へ連れて行ってもらった。

それからはなんだか良く覚えていないけど、たくさん彼が身体をさすってくれたと思う。

とにかく痛かった。

早く産みたくても助産師さんに「ストップ!ストップ!」と言われ続けて何で!何で!何で!何で!とずっと怒っていた。

そして朝方にようやく「ゴー!」サインが出たと同時にアイハが産まれた。

生まれたてのアイハは“赤ちゃん”の代表のような赤ちゃんだったと思った。

真っ赤に泣き上げるアイハをおぼつかない手付きで抱いている彼が号泣していたのを覚えている。

それから私は寝てしまい、昼過ぎに起きた。

痛む身体を引きずりながらアイハを見に行くと、小さな小さなアイハがそこにいた。

笑いながら、
泣いた。

彼との家族が出来た。
魂の繋がりが出来た。

そしてそのアイハが愛しくて愛しくて堪らなかった。

後ろから彼が私を見付けてそっと私の身体を支えてくれた。

そして私に「ありがとう」と言ってくれた。
私達に家族が出来た。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーリンク