第116話 《キキョウ》31

彼とアイハと3人での生活が始まった。

相変わらず彼は朝から晩まで一生懸命に働いていた。

私は毎日アイハの育児に奮闘していた。

大学では小児心理学を専攻していたし、保育士の資格も取った私に彼も安心して育児を任せてくれていた。

甘かった。

慣れない育児に加えて異国の地での子育ては、頭では理解しているつもりだった私にとって、想像を超えたストレスがのし掛かってきた。

そのうち、
彼の頑張りに嫌気がさすようになり、
ベタベタくっついてくるのが煩わしく思うようになった。

平日は育児に参加してくれない彼に不満を持った。

毎日荒れていく肌や髪がふと買い物途中で見る同じ世代の子達と比べると恥ずかしくなった。
何で私ばかり苦労をするんだ!と、幸せなはずの結婚生活が毎日に追われ、ボロボロになっていくような気がした。

私は幼かった。
毎日の生活に一杯一杯だった。

そんなある日、インターネットで外国人の子育て支援サイトを見付けた。

同じように悩む人達が大勢いて、一人じゃないと感じるようになり、私は暇さえあればそこにのめり込むようになった。

そしてそこで自分の不満を撒き散らした。

そこで得たアドバイスを鵜呑みにして、彼との喧嘩も次第に増えていった。

仕事に行かないでもっとアイハの面倒を見てよ!
だとか
私だって疲れているんだから自分でご飯くらい用意して!
だとか、段々彼にも不満を撒き散らすようになった。

彼は寂しかったんだと思う。

欲しかった家族が
理想の生活が
音を立てて崩れていく。

そんな気がした。

私はわがままだった。

自分のことで手一杯になった。
それでも何とか踏ん張ってやってきたけれども、遂にアイハが3才を迎えようやく手が掛からなくなった途端、まるでぷっつりと糸が切れたように身体が動かなくなってしまった。

いわゆる育児ノイローゼになった。
それから彼は私を支援していた外国人女性保護団体に糾弾されていった。

真面目な彼の精神はそこで崩壊された。
そして彼は世界を憎み続け、
私はそこで目が覚めた。
幸せも不幸せも自分の心が創ることに。

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