第122話 《逃避》3

「アイハー!ママちょっと博士から電話来たからパパのアパート行ってくるから―!」

「え―!なに―!?パパどうかしたのー!?」

「いなくなったらしいの!」

「え!?パパが!?」

「そう!」
私が車のキーを手に取り玄関へ向かおうとすると
「私も行く!」
とアイハが立ち上がった。

「あなたは学校に行きなさい!」

「イヤ!私もパパが心配だもん!」

「…わかった。早く用意しなさい!」

「はい!」
食べ掛けのトーストを口一杯に頬張り、一気に牛乳で流し込むとアイハは自分の部屋に駆け込んですぐにジャージに着替えて出てきた。

「準備OKよママ!」

「よし!」
二人で車に乗り込んで彼のアパートへ向かう。

彼が目覚めてから混乱を避けるという理由で面会出来なくなって一週間。
彼に何が起きたんだろうか…

不安が胸の奥から突き上げてくる…

久しく感じなかった焦燥感。
彼に対する得たいの知れない恐怖を感じながらハンドルを握っていた。

「パパも大概ムダにアクティブよね」

隣でアイハが軽口を叩く。

「大丈夫よママ!パパは帰って来たんだから!」

彼女はいつも楽観的だ。一体誰に似たんだろうか…
———————–
彼のアパートに着くとまずアイハが鍵を片手に掛けていった。

その間に私は車を駐車場に止める。
「ママー!」

アイハが呼んだ。
急いで駆け付けると入り口の隣にあるトイレの窓ガラスが割れていた。

「…やっぱり…」
「入ろママ!」

鍵は開いていた。
カチャリ…
「パパー?いるー?」

…返事は無い。

恐る恐る中に入ると埃っぽい部屋の中にうっすらと彼のものと思われる足跡があった。

アイハは「パパ―どこ―?」とずんずん奥に入っていく。

「いないわ」

一言アイハが呟いた。

私は動悸が激しくなり、その場でへたり込んでしまった。
「ちょっと大丈夫?ママ!しっかりして!」

アイハが駆け付けて私を背中から支えてくれる。

「…大丈夫…大丈夫よママ…」

ゆっくりと背中を撫でてくれる彼女を感じながら、私は恐怖を感じている自分に気が付いた。

彼が
帰って来た。

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