第123話 《逃避》4

彼の常識外の行動
割れたガラス
残された足跡…

それまでの安堵感はどこへ行ったのか、不安と焦燥感だけが胸を突き上げる。
「うッ!」

さすられる背中に吐き気を催して、その場へ朝御飯を吐き戻した。

「ゲェ―…」
「ちょっとママ!大丈夫!?」

アイハの声がなんとか気力を奮い起たす。

「ハァ…ハァ…大丈夫…ごめんね、こんなんなって…」

「いいのよ。も―パパめ―!ママにこんなに心配させて―!」

アイハが立ち上がるとふっと背中が軽くなり、顔が上に上がる。

ふと気付くと、戸棚に違和感を覚えてよろめきながらそこへ向かった。

「ママ…?」

…無い。
彼の財布が無くなっている。

「…財布が無い…」

「コンビニに行ったんじゃない?」

「いや…」
奥の部屋を見ると無造作に投げられた病院の入院服が目に入った。

近付いてみるとタンスから衣服を着替えた形跡があった。

「着替えてる…?」

「どこに行ったのかなぁパパ―」

そうだ。どこに行ったんだろう…?
ひょっとして、機械に入る前の彼と変わらなかったら…

「いやあぁぁぁぁぁッ!」

「ママ!大丈夫!?ママ!」

またあの日々が来る
またあの日々がやって来る

覚悟したあの日々がまたやって来る。
ドン!ドン!と音を立てて心臓の音が高くなるにつれて胸がどうしようもなく苦しくなっていく。

「アイ…ハ…」
ピロロロロロッ!
その時私のポケットから携帯電話が鳴り響いた。

アイハが私の服からもどかしく携帯電話を取り出すと電話に出た。

「…はい…はい…おじいちゃん?アイハです…はい…えぇー!はいはい!わかりました!ママに変わります!ママー!おじいちゃん!パパ日本だってー!」

日本…!?
急いで携帯電話をアイハから渡された。

「はい…」
「あぁキキョウ?大丈夫かい?朝から騒がしてすまない。ラブイズなんだが日本に行ったようだ。理由はわからないが警察に協力してもらい監視カメラから足取りを追ったんだ。とりあえず話し合おう。今から来れるかな?」

「はい…」

「気を付けて来るんだよ。じゃあ一旦切るからね」
…日本

日本に何があるというんだろう…

「日本か―。パパ出掛け過ぎ!!」

そしてアイハとその足で博士の研究室へ向かった。

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