第132話 《アイハ》6

駅から降りて改札を抜けるとそこは空港だった。

マジか…

日本狭いはずなのにまた飛行機乗るのか…

それはママも諦めるカンジになるわ。

でもまた飛行機に乗れる!

へへへ…やった!

受付に行ってすぐ乗れる便を探すと一時間後にはあるみたい。

会計の時にパパがクレジットカードを出すと、ブシおじいちゃんは「いらん」と言い、財布から現金を支払っていた。

そういえばホテルのお金もブシおじいちゃんが払ったのカナ…

一応ママから一枚クレジットカードは預かっているケドまだ使っていない。

「ママからクレジットカードあずかッてる」

一応ブシおじいちゃんに聞いてみたケド、案の定「いらん」と言われた。

さて、フライトまで一時間か…

と思ったら、検査を抜けてフライト場に辿り着くまで20分も掛かってしまった。

ムダに広いなこの施設…

ブシおじいちゃんは搭乗口に着くとイスに座り、また腕組みをして目を瞑っていた。

隣でパパもまたマネをしている。

パパ…
なんかそうしているとウォー〇ーみたいだよ…
なんか探されちゃうカンジ。

さて、
とりあえずパパの目的をハッキリさせるか。
博士のおじいちゃんに報告しなきゃいけないからね!

「パパ…」

「ん…?」

片目をチロリと上げるその顔はブシおじいちゃんのマネですね。

だからパパがそれしても似合わないって。間違った日本文化を広めないでほしい。

「普通に話して」

「あ…はい」

「あのね、パパこれからどうしたいの?」

「あぁ、まぁお義父さんと仲良くなって、話をしたいかな」

「じゃあ今すればいいじゃない」

「いや…パパ、日本語話せないからなぁ…」

「私が通訳するよ」

「うーん。なんていうかさ、落ち着いて自分の言葉で話し合いたいんだよ。
また聞きだと繊細な意味合いも歪められてしまうからね」

「じゃあどうするのさ」

「うん。パパが日本語を覚えるしかないかなぁ」

「…それって時間掛かるんじゃない?」

「いやぁ、一年もあれば何とかなると思うよ」

「一年!?何言ってんのパパ!私学校だってあるんだよ!?」

「アイハは帰っても大丈夫だよ。
パパさ、ひょっとしたらマシンから起きなかったかも知れないだろう?
それを考えたら、今目の前に出来ることをやって生きようと思ったんだよ。
それはママやアイハのことも考えたよ。
たくさん考えた。
結果として色々迷惑を掛けたけれども、今パパは生きていて、そしていつかはいなくなる。
その時間を考えた時に、私の家族の中ではママのお父さんの時間が一番短い確率が高いんだ。
パパはママのお父さんと一回しか会ったことがなかった。
それからは自分のことで精一杯だった。
だけど、アイハ。
君の成長した姿を見た時に、驚きと、そしてその後とてつもない喪失感に襲われたんだ。

“時間は戻らない”ってね。

パパは君とたくさんの時間を過ごしたかった。
そうした時に、ママのお父さんもそうなんじゃないかって気付いたんだ。

でもパパとママのお父さんは違う。
だからパパはまずママのお父さんの気持ちを知るところから始める。

最も人生が短い確率の家族と今しか出来ないことをするのはとても合理的だと思ったことと、私がもし起きなかったことを考えると、私がいなくても向こうの生活は変わらないだろうという浅はかな推測が合致した時、もう身体が動いていたんだ。
明日、ママのお父さんに何かあったら永遠に会えなくなるってね。

ただ、今はそれは間違いだとも思う。

ママのお父さんに限らず、君やキキョウにも明日会える確証がある訳ではないからね。

だからアイハ。
今君に会えて良かった。

ありがとう」

「パパ…」

その時場内に搭乗のアナウンスが流れ始めた。

ブシおじいちゃんはまたカッ!と目を見開いて「行くぞ」と立ち上がった。

私は歩きながら、そして飛行機に乗り込んだ後も、何回も何回もパパの言葉を思い出していた。
飛行機が飛び立つ瞬間を忘れる程に。

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