第150話 《キキョウ》36

その手紙を読んだ時、私の心の中でいつもとは違う何かが、チリッと小さく弾けたような気がした。

けれど、それが何なのかはわからず、私は小さな違和感を感じていた。

小さな違和感を探すように、何度も何度も手紙を読んだ。

何度も
何度も
何度も
何度も。

幾日かして、私は唐突に気が付いた。

その時に私は声をあげて吠えるように哭いた。

私はヤスダタミコが好きだったのだ。
あの人の優しさに私はようやく気が付いたのだ。

チリチリと胸を焦がしていた想いは、もっとあの人に愛されたいたかったという気持ちのあらわれと、
その後にあらわれた燃え盛る業火は、強烈にあの人に会いたいという情念に変貌した。

哭き叫びながら走り出した私の姿に街の人々は驚き、私はそんな人々を押し退けるように駅に向かって駆け出していた。

そして、一人の警察官に補導されると、私は髪を振り乱しながらそれを振りほどき、逃げるように走ろうとしたが、若い男性警察官の力に敵うはずもなく、ただただ哭き叫んでいた。

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