第155話 《キキョウ》41

「私立の中学に編入したい」

「わかった」

父が反対しないことは薄々わかっていた。

考えてみれば、父は私に反対や意見をすることが無かった。

ただただ無関心だった。

後、この少し前から私はフリースクールで料理の勉強をしていた。

何かしらフリースクールとの繋がりが欲しかったのと、食べるものから肌の状態が作られることを勉強の中で学んだからだ。

中学3年生に上がる年、私は私立中学に編入した。

学校では皆勉強ばかりしており、私に対して過剰に嫌がらせをする生徒はいなく、その心配は杞憂に終わった。

ただ、時間ごとに詰め込まれる授業には嫌気がさした。

解りづらいところ等がすぐに質問する間も無く、次々と内容だけが進んでいった。

幸い基礎は済んでいたので何とかついていってはいたが、わからないところはおじいちゃん先生に聞きにいった。

また三者面談や、進路の相談など、親が関わることは全部おじいちゃん先生が助けてくれた。

無事中学からエスカレーター式に高校に進学し、目標となる大学まで決まっていた私は、勉強に明け暮れていた。

初めて人生の目標が決まった高揚感と、日々の勉強の忙しさで、高校生活はあっという間に過ぎていった。

その中で友達も出来た。
初恋もした。
勉強も頑張った。
学校の行事も楽しんだ。

私は普通の子になれた。
———————–

そして大学の合格発表の日。
合格の確認した私は誰よりも早くにおじいちゃん先生に報告をした。

おじいちゃん先生は電話口で涙声になりながら私に「おめでとう」と言ってくれた。

大学では児童心理福祉を専攻した。

そしてその秋におじいちゃん先生が倒れた。

フリースクールの職員からの連絡でそれを知った私は走った。

走って
走って
走って
走って
最短距離でおじいちゃん先生の病院まで駆けていった。

なんで
なんで
なんで
なんで
と、
行かないで
行かないで
行かないで
行かないで
が、走る私の頭の中でこだまして、そしてそれとは別に言葉にはならない焦燥感が胸に不安を募らせた。

病院に着いた時、おじいちゃん先生はもう冷たくなっていた。

家族らしき人がたくさんおじいちゃん先生のそばにいたのをかき分けて、私はおじいちゃん先生にしがみつき叫ぶように泣いた。

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