第158話《キキョウ》44

博士からの電話から幾日か過ぎた。

私はまだここにいる。

ここ最近また身体の痒みが酷くなってきた。

これはストレスによるものだと思う。

それは『なんで父を受け入れない私だけが悪者みたいになっているんだろうか』と考え始めてからだった。

父は父なりの不器用な愛を持っていた。

それは分かる。
分かるけれども、それで私の心が晴れる訳じゃない。

むしろもっと私のことを考えてくれたら、父は私を普通に育てることが出来たんじゃないか?

父が周りの人を受け入れて、きちんとサポートしてくれていれば私はあんなに辛い思いをしなくて済んだはずだ。

彼のことだってそうだ。

私の気持ちかどうか分からないけど、私のことを考えるなら私のそばに居てくれたっていいじゃないか。

私の気持ちが分かったというならば、私を第一に考えてくれたっていいじゃないか。

アイハの気持ちも分からないではないけれど、あの子を必死に育て上げたのは私じゃないか!

なんで皆私を見てくれないのだろう。

私が健康だから?

じゃあ病気になれば皆優しくしてくれるの?

病気のフリをすればいいの?

なんで?
なんで?

ああ、イライラする。

いっそのこと居なくなってやろうか。

私なんて居なくても皆困らない。

私なんてやっぱり必要の無い人間だった。

もう何の為に生きているのか分からない。

夫は私の気持ちだか知らないけれども私のことなんてお構い無し。
子供は病弱の夫に付きっきり。
親は私を放っておくばかり。

皆私のことを理解してくれない。

いっそ命を…

…いやそれは出来ない。

アイハにこれ以上辛い思いはさせられない。

ああ
消えたい。

この世界から私の存在を消したい。

私が生きた痕跡を全て消し去りたい。

そうすれば誰も悲しまない。
誰も傷付かない。

もう私はこれ以上傷付きたくない。

私の心をこれ以上傷付かせたくない。

頭の奥で耳鳴りがキィーンと警鐘を鳴らし続けている。

それが“これ以上頭で考えるのは危険”だと言わんばかりに私の頭に鳴り響く。

不正出血が続いていた。

昔からそうだ。

私は体調を崩すと婦人科を悪くする。

貧血が進み、目も霞む。

ああ…
このまま永遠の眠りにつけたなら…

毎日そんな日々が続いた。
毎日夜にアイハからのメールが届く度に、私の脳を締め付けるようになった。

それと同時くらいに、私は仕事を辞めた。

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