第170話 《アイハ》20

「ふぁ~あ、おはよう…」

「あ!おはようパパ!ブシおじいちゃんね!朝ごはん作ってくれたよ!」

「食え…」

いつもの憮然としたブシおじいちゃんに戻った。

パパは寝癖満開の髪の毛をボリボリ掻きながらちゃぶ台についた。

馴染み過ぎ。

一昔前のパパからは考えられない位朝のダメオヤジを演出している。
昔のパパも寝癖ボンバーだったケド、朝からキリッとしてたもんなー。

「もう…いいか…?」

あ!ブシおじいちゃんに抱き付いたまんまだった。

「はい!」

パッと離すとブシおじいちゃんはコンロに火を入れてお味噌汁を温め直した。

トコトコトコ
「パパ」

「うん?」

「ブシおじいちゃんに話したの?」

「うん、話したよ」

「いいの?」

「うん、いいよ」

「そうなの?」

「そうだよ」

「そっかぁ」

「うん」

そう言ってパパはブシおじいちゃんが読み掛けの新聞を無造作に手繰り寄せた。

「いつ行くの?」

「今日」

「今日!?飛行機は?」

「予約した」

「早!」

「うん」

「ママには?」

「言ってない」

「なんで?」

「遅かったから」

「そっかぁ」

「うん」

カチャカチャとパパの食事が並べられていく。

「ブシおじいちゃんいいの?」

「おう」

ダメだこの男共。
会話を欠き消されていく。マ〇トーンかい!?
まぁいいか。行くのは決めたことだし。

「パパ、何時の飛行機なの?」

「10時」

「ちょ!!
10時なんてすぐじゃん!荷物荷物!」

私が急いで準備をしている間、パパは優雅な朝食を取っていることに微かな敵意を覚えた。
パパめ…

「パパー!自分の準備は自分でしてねー!」

「おー」

!!
ブシおじいちゃんの真似してるッ!
ただブシおじいちゃんの“おぅ…”には円熟さがは程遠い!
むぅーパパめー!
ブシおじいちゃんのマネばっかりしてー!
所詮騎士止まりなクセにー!
武士とサムライの違いもわからないクセにーッ!

…とそんなことを考えながら準備していたら、あっという間に出発の時間になった。

———————–
「…じゃあ…ブシおじいちゃん行ってくるね」

「おぅ」

「お父さん、本当にお世話になりました」

「おぅ」

「ちょっと!また帰ってくるんでしょ!」

「うん、まぁ挨拶だよ」

「もう!ブシおじいちゃんまたね!」

「…おぅ
…気ィ付けてな…」

なんだか淋しそう。

「おい」とブシおじいちゃんがパパに話し掛けた。

「はい」

「アイツ…頼むな…」

「はい…!」

ブシおじいちゃんがパパに頼むなんて初めてみた。

“1番線に新千歳空港行きが参りますー白線まで下がってお待ちくださいー”

「あ、電車来た」

「じゃあお父さん、行ってきます」

「おう」

「ブシおじいちゃん!」

「おう」

「これ!」
と私が被っていた毛糸の帽子をブシおじいちゃんに被せた。

「な…」

「行こ!パパ!」

「あ、あぁ」

ブシおじいちゃん固まってる(笑)

トゥルルルルルルル…

「ブシおじいちゃんそれ貸したげるからー!」

「…」

プシュー…ガコン
電車が動き出す。

私には聞こえていた。
ブシおじいちゃんが小さな声で「おう」と言ってくれたことを。

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