第180話 《アイハ》30

夜。

飲んだくれた親父共は孔明の執事達に連れられて寝室へ運ばれて行った。

私はチャイナドレスのお姉さんに連れられて部屋を出た。

「アイハちゃんすごいねぇ」

部屋を出るなりお姉さんが話し掛けてきた。

「えー?なんでですかぁ?」

「あの気難しくて破天荒な大老に初対面で爆笑するなんて!」

お姉さんは思い出したようにくくく…と手を口に当てて笑いだした。

綺麗な人だなぁ。
頭は小さくて背は高くて手足が長くてまるでモデルみたい。

顔は…誰かに似てるなぁ…

あ!
小〇!
“ラストサムライ”に出てたあの人に似てる!

「ん?私の顔ヘン?あぁ、こんな頭をしてるものね…普段からこんな格好していないんだけどね。
大老の気紛れに合わせて私達も色々準備させられるの」

少し呆れたカンジのお姉さんは頭のおだんごを指差しながらも、その表情は穏やかな印象を受けた。

「…大変だったね。アイハちゃんも疲れたでしょう?少し休んでいってね」

そういうとお姉さんはまるで高級ホテルのような一室に案内してくれた。

「…今日は…泊まるの?」

「うん。大人達があんな感じだからね。パジャマも用意しておいたから今日のところはゆっくりしていってね」

お姉さんはそう言うとドアを閉めて出ていった。

とりあえずベッドに身を投げ出し、マフマフする。

なー

超絶金持ちですなー

これはジニアスとの結婚も真剣に考えるか。

玉の輿。

あー
でも今日は色々ありすぎて疲れたナァ…

ママ…

そのまま吸い込まれるように眠りに着いた。

———————–
ピンポーン
ピンポーン

うにゃ…

ピンポーン
ピンポーン

…だれ…?

ハ!寝ちゃった!?

ベッドに付いている時計を見ると23:00を過ぎたところだった。

ガチャ…
「アイハちゃん…入るよ…」

あ…さっきのお姉さんだ。

「寝てたところごめんなさい。大老がお呼びなの…大丈夫?」

「あ…あぁ…大丈夫です。ちょっとシャワーを浴びていいですか?」

「ふふふ…大丈夫よ。
じゃあ大老にお伝えしておくわね。また後で迎えに来るから…」

「すみません宜しくお願いします」

孔明がなんの用だろ?

ふんふ~んとゴージャスな浴室に鼻歌が溢れる。

頭洗ってー
身体洗ってー
湯船に浸かってー

う゛ー…
極楽じゃあ…

………

あ!呼ばれてるんだった!

急げ急げ!

ピンポーン

はーい待ってねー!

ピンポーン

まだ裸まだ裸!

ピポピホピポピホピポピホピポピホピポピホ!

連打!!

「はーい!ちょっと待っ…」
ガチャッ!バン!
「遅いわ…あ!」
「大老!ちょっと!あ!」

「ぎぃやーッッッッッ!!!!!!!!!」

バタン!

見られた?見られた?

花の乙女のあらわな姿見られた!?

「アイハちゃーん!ごめんねー!ちょっとお祖父様!」
ドアの向こうからお姉さんの声が聞こえた。

あの孔明めぇー!

素早く用意されたパジャマに着替え、ずんずんとドアに向かう。

「こらぁ!あ…?」
ドアを開けたら孔明正座。

真っ赤なガウンがなんとなく捨てられた犬に被せられてるカンジがする。

そしてお姉さん腰に手を当て仁王立ち。

「あ…ごめんなさいねぇアイハちゃん。
ほら!お祖父様も謝って!」

「すまん…」

ショボくれてる!
てかお祖父様?

あれー?あのお姉さんマゴなのか…?ってしたらジニアスのお姉さんじゃん!

「お姉さん!すみません!なんか!あの!」

「いえいえいいのよ~。このエロジジイとっちめてやるから」

「…いや…だからすまんて言っておろうに…」

「礼節が大事だっていっつも偉そうに言ますよね!」

「いやぁ…」

「“いやぁ”じゃありません!くしゃみも恥じらう乙女に何やっているんですかッ!」

「あ…いや…その辺で…」

そんなナイスボディじゃありませんし。

見られて減るもんじゃありませんし。

「ほらぁ…アイハもああ言っておろうに」

「“ほらぁ”じゃありません!本当にまったく…」

「まぁここじゃなんですし、この部屋でいいですか?」

「アイハ…」

「はい」

「足がしびれて立てん」

「なにアイハちゃんに甘えてるんですか!ほら!さっさと立つ!」

「…アテテ…」
「あ!」
ぐらぐらしながら立ち上がろうとする孔明に駆け寄り抱き上げてあげた。

「アイハは優しいのぅ」

「もう!アイハちゃん、あんまり優しくしなくていいからね!」

お姉さんはそう言うと、私がいた部屋のドアを開けてくれた。

私は孔明、もといケンおじいちゃんの手を引きながら後に続いた。

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