第186話 《アイハ》36

う…うぅ…ん…

朝か…

トントントン…と包丁の小気味良い音と、美味しそうなお味噌汁の匂いで目が覚めた。

あれぇ…?ママァ…?

…てパパか…

ブシおじいちゃんの家でたまにパパがお料理することがあった。

ガチャ、トコトコトコ…

「パパおはよう…」

「おはようアイハ!デリバリーばかりじゃ栄養が偏るから今日はパパが作ったよ」

ぷぅんと香るお味噌汁は匂いダケならママに近い。

どれどれ…と味見をすると…しょっぱい…

「パパ、28点」

ノォゥ!とジムキャリーばりにガッカリするパパが面白い。

なんとなく面白くなってカニ歩きをしてリビングへ横切る。

テレビを付けてもくだらないニュースでいっぱいだ。

ぽやぽやしているとパパが朝ごはんを用意してくれた。

味噌汁とおにぎりというシンプルさが素敵です。

もしゃもしゃ食べる。

うむ、しょっぱい。

仕方ない、夜は私が作るか。

もっちゃもっちゃおにぎりを食べていると、パパが「昨日ママのお父さんに電話したから」と言ってきた。

なんだかパスポートが一週間くらい掛かるらしい。
てか来るのか…

「だからおじいちゃんが来たらアイハが迎えに行ってくれるかな?」

「うん、わかった」

「ありがとう。ご飯を食べたらパパはママのところに行くけど、アイハはどうする?」

う~ん…

「…今日は家の片付けをするよ。夕方に行くから」

「そうか、わかったよ。じゃあパパは先に行くね」

「うん、気を付けてね」

「わかったよ。ありがとう」

それからパパは準備をしてママのいる研究室へ出掛けて行った。

私はパパの汚した台所から片付けを始めた。

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あらかたの片付けは昨日終わっていたので、今日は細かい掃除をした。

途中、スマフォが何回か気になったケド、気にしないように目を背けた。

買い出しに出掛け、色々な食材を手に入れて帰宅。

グラタンの下ごしらえを終えた頃にはもう夕方だった。

ママのいる研究室へ向かう途中、パパに頼まれたボールペンやらノートやらを買っていった。

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研究室に着いてまずママの顔をモニターで見る。

いつも同じ顔だ…

生きているのかそうでないのかわからない顔…

パパに備品を渡し、また泣き続けるテムズさんに計器の見方を教えてもらいながら、私はなんとなく今日を過ごした。

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夜、家に帰りパパにグラタンを作ってあげる。

二人とも静かにそれを食べる。

食べ終わると後片付けをし、お風呂に入り、ベッドへ潜った。

ママ…

ママが居ないだけでなんだかパサパサした空気に感じる…

私の毎日の彩りは、ひょっとしたらママが与えてくれたのかも知れない。

電源を切って二日目のスマフォがリビングのテーブルに置いたままなのを思い出した。

その日、私はなかなか寝付くことが出来なかった。

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