第187話 《アイハ》37

そんな無味乾燥な生活から一週間、ブシおじいちゃんが来ることになった。

空港まで迎えに行くのに一週間振りにスマフォに電源を入れると、ジニアスからの着信やメールで埋め尽くされていた。

中を見ることもなく無造作にスマフォをカバンにしまい、空港に向かった。

———————–
ブシおじいちゃんが着くのは15:00過ぎとパパから聞いていたがだいぶ早く着いてしまった。

空港内ではたくさんの人々がそれぞれのペースで行き交っている。

人はたくさんいて、自分以外のみんながキラキラ輝いているように見えた。

胸の奥で沸々と怒りにも似たどす黒いものが、マグマの沼のようにたゆたっている…

なんとなく足がふわふわして、身体に現実味を感じない日々が続いていた。

ドン!と後ろからぶつかり謝りもせずに歩きスマフォをしていくビジネスマンに軽く殺意を覚える。

みんな忙しそうに、
みんな幸せそうに

私だけが取り残されたような、そんな感覚に囚われていた。

しばらく学校にも行ってない。

午前中に家事をして、午後からママのところに行く生活になっていた。

毎日テムズさんと接する中で、テムズさんの気持ちがわからなくもないけれども、いつもいつも謝られていると段々と心が疲れてきていた。

変わらない、少し痩けたママの顔をモニターで見ていると言い様のない寂しさが募った。

…私は…

私は何がしたいんだろう…

『間もなくー東京ー成田空港からの便がー到着致しますー』

あ…ブシおじいちゃん来るな…

それからしばらくするとブシおじいちゃんと…

ジニアスッ!?

…めっちゃ手ぇ振ってる…

いつも通り無骨にのっしのっし歩くブシおじいちゃんの後ろから、歩幅が合わないのか少し突っ掛かりながらジニアスがついて歩いてきた。

…ハコフグハットを被って。

「ブシおじいちゃん久しぶり」

「おぅ…」

「ジニアスは何しについて来たの?」

「Ohーアイハ…何回連絡しても返信も来ないからさ…
ブシおじいちゃんに頼んで僕も連れてきてもらったんだ!」

「“連れてきてもらったんだ!”じゃないよ。
まずその帽子をとって」

「Oh…」

「“Oh”じゃない」

「行くぞ…」

「あ…ブシおじいちゃんごめんね。すぐ研究室に行く?」

「…おぅ…」

「僕もついて行っていいかな…?」

「どうぞご勝手に」

「Oh…つれないなアイハ…」

「“Oh”じゃない。ブシおじいちゃんこっちよ」

そうやってタクシーで研究室に向かった。

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