第188話 《アイハ》38

研究室に向かう途中、ブシおじいちゃんは黙ったままだった。

私も黙っていた。

時折ジニアスが話し掛けてきたケド、つれない返事に空気を察したのかすぐに黙り出した。

研究室に着くと、ブシおじいちゃんは博士のおじいちゃんとテムズさんに軽く挨拶を交わすと「あいつはどこだ?」とパパに聞いた。

パパは黙ってママのモニターの前にブシおじいちゃんを連れていった。

ブシおじいちゃんは仁王立ちのまま、
「バカ野郎…」
と一言呟いたきり、押し黙ってしまった。

重苦しい空気が研究室を取り巻いた。

ブシおじいちゃんは「おい」とパパを呼ぶと、二人で研究室を出ていった。

「アイハ…何て言ったら言いか…」

ジニアスがその場から声を掛けてきた。

「…なにも言わなくていい…」

「…少し話さないか…?」

「…今は何も話したくない」

「そうか…そうだよね…わかった。僕は一旦家に帰るよ。何かあったらいつでも連絡をしてほしい」

「…“何か”無い」

「…うん、わかったよ…またね…」

そう言ってジニアスは帰っていった。

そして私もすぐに家に帰った。

———————–

家に帰るとブシおじいちゃんの為に日本食を作り、二人を待った。

刻々と時間だけが過ぎていく…

ピロピロピロ
ピロピロピロ

私のスマフォの着信が鳴り、画面を見るとジニアスからだった。

しばらく画面を見続けていると着信が切れた。

それからややしばらくしてジニアスからのメールが入った。

私は、ただぼんやりとメールを開いた。

『from ジニアス』
『アイハ、君のそばに居たい。』

ただ、それだけの文章だった。

ふと、なんとなく今までのメールを開いてみた。

『from ジニアス』
『ブシおじいちゃんと飛行機に乗るよ。アイハ、これから行くから待っていてね。』

『from ジニアス』
『今日遂にブシおじいちゃんにパスポートが届いたって連絡があったよ。早速明日の飛行機を取った。待っててアイハ。すぐに会いに行くよ。』

『from ジニアス』
『今日は何をしていたんだい?今日もブシおじいちゃんのところにはパスポートが届かなかったよ。なるべく早くに行くからね。アイハ、元気かい?』

『from ジニアス』
『まだブシおじいちゃんのパスポートが届かない。アイハ、大丈夫かい?ごはん食べている?またアイハのグラタン食べたいな』

『from ジニアス』
『君のことが心配だ。それとは別に君の声が聞きたい』

『from ジニアス』
『アイハ、今はやっぱり君以外のことは考えられないんだ。昨日はちょっとかっこいいこと書いたけど、本音では君に会いたいよ。』

『from ジニアス』
『アイハ、留学を止める手続きをしたんだ。でも君だけの為じゃない。自分のこれからの人生を見つめ直すいい機会だった。
アイハ、僕もそっちに帰るよ。
時間が出来たら連絡をください。』

『from ジニアス』
『アイハ、一日中君の事を考えていた。僕に何が出来るか。
僕もブシおじいちゃんと一緒に帰ります。』

『from ジニアス』
『アイハ、元気かい?僕に出来ることはあるかな?』

『from ジニアス』
『アイハ、今日ブシおじいちゃんに会いに行ったら、そっちに行きたいって相談を受けたんだ。ブシおじいちゃんのことは任せてほしい。パスポートや手続きの事は僕がやるから。アイハ、君は元気かい?』

『from ジニアス』
『今日、姉さんから電話が来た。アイハ、僕はなんて言っていいかわからない。ただ、君のそばに居たい。』

『from ジニアス』
『今日、ブシおじいちゃんの家に行ったんだ。そしたら急に帰ったと聞いたよ。忙しかったところに連絡ばかりしてゴメン。落ち着いたら連絡がほしい。』

『from ジニアス』
『アイハ、君から連絡が無くなって二日経つよ。僕が悪かったなら謝る。ただ、理由を聞かせてほしい。連絡待っています。』

『from ジニアス』
『アイハ、僕は君に何かしたんだろうか?君に会いたい。君の声が聞きたい。困っているなら力になりたい。連絡待っています。』

『from ジニアス』
『どうしたの?忙しいのかな?連絡待っています。』

『from ジニアス』
『何かあった?』

『from ジニアス』
『今度の休みはどこか行かないかい?サトランドが今熱いらしいよ!』

……

ジニアス…

心の奥底に潜んでいたジニアスのことが思い出される。

私はジニアスに連絡をした。

『会いたい』

すぐにジニアスから返事が来た。

『すぐに行くよ』

私はブシおじいちゃんに用意したご飯をすぐに食べられる状態にセットして、外へ飛び出した。

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