第190話 《アイハ》40

家に入るとブシおじいちゃんがもしゃもしゃご飯を食べていた。

「ブシおじいちゃん、ただいま。美味しい?」

「おぅ」

「アイハ、お義父さん明日帰るから送ってあげてくれるかい?」

「え!?もう帰っちゃうの!?」

ブシおじいちゃんはズビビ…とお味噌汁を飲んでいる。

「少し…ゆっくりしていけばいいのに…」

「仕事があるのさ、アイハ、頼むね」

「うん…わかったよ」

ブシおじいちゃんはご飯を食べ終わるとソファに横になってグーグーと寝てしまった。

ご飯の後片付けをパパとする。

「アイハ」

「なぁにパパ」

「その…ジニアスとは結婚するのかい…?」

「まだ考えられないよ」

「“まだ”?」

「いやぁ、“全然”考えられません」

「うむ…うむ…そうだよな…」

「ねぇパパ…?私、どうしたらいいと思う?」

「ん…何をだい?」

「これからのコト…

ジニアス、パパの研究室に入るって」

「ジニアスが…」

「なんか…私なんかあそこに行っても何も役にたたないしさ。それだったらこうやって、家でパパのお世話してた方がみんなの為にはいいと思って…」

「そうか…アイハが決めたことなら、パパは特に何も言わないよ」

「ジニアスと結婚」

「ぐ…それは言う…」

「ウソじゃんっ!」

「いや…それはまた違う話だろう?」

「まぁまぁ一緒だよ」

「まぁまぁ一緒かい?」

「うん」

「そ…そうか?」

「うん」

「そうか…」

「うん」

「アイハ…」

「うん?」

「お義父さんな…泣いていたよ…“俺が悪かった”って…“なんとかしてくれ”って頼まれたんだ…」

「ブシおじいちゃんが…」

「うん…どちらにしてもパパはママに付きっきりになる。これから研究室に泊まることも出てくると思う。アイハはいつでも研究室に入れるようにしておくから」

「うん…わかった」

そうやって二人で洗い物を終わらせた。

パパは家事がへたくそだけど、何かと最近一緒に居てくれる…

ジニアスもそばに居てくれる。

ブシおじいちゃんも来てくれた。

ママもそばに居る。

…“そばに居る”ということ。

何かあっても、
何もなくても、

そういうことが大事なのかも知れないー

夜、ベッドの上でジニアスにもらったネックレスを出してみた。

ジニアスの決意が入ったネックレス。

ジニアスは何をどう思ったんだろう…

SNSを覗くとジニアスからメッセージが届いていた。

『アイハ、今日は会ってくれてありがとう』

すぐさまメッセージを返す。

『こちらこそありがとう。手、大丈夫?』

一分も待たずに返信が来た。

『大丈夫だよ、ありがとう。今日はびっくりさせてゴメンよ。』

『いいの、ちょっとびっくりしたケド嬉しかったよ。』

『そうか、喜んでくれたら嬉しいよ。ねぇアイハ。』

『なぁに?』

『大好きだよ』

胸にじんわりと温かさが広がる…

『ジニアス、私も大好きだよ。もう寝るね。おやすみなさい。』

『おやすみアイハ。大好きだよ。アイハにとっていい夢が見れますように』

『ジニアスもいい夢が見れますように』

『じゃあおやすみ!』

『おやすみなさい』

ジニアス…

ジニアスは優しい。

私はパパが言うように、ジニアスは私達に近付く為に私と付き合っているとは思えない。

好き。

私はジニアスが好きだ。

ジニアスは自分の人生を決めた。

私は…

乾いたジニアスの血がこびりついたネックレスを見つめながら、私はただぼんやりと考えていた。

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