第193話 《アイハ》43

朝、バスでジニアスのお家へ向かう。

いちいち言いに行かなくてもいいかも知れないケド、“ケジメ”ってヤツだ。

ママがお世話になっていることも含めて私自身が挨拶に行くべきだろうと思った。

私は、自分のコトがまだまだ子供だと思うケド、もう大人だって思う時もある。

今回、たくさん悩んで自分の道を決めた。

普通は大学生とかになって考えるものかも知れない。

もっと子供らしく「ワタシ、ナニモデキナイ」って言っても良かったのかも知れない。

結果として、みんなが提案したことを全部蹴ったカンジになったかも知れない。

私には正しい答えなんてわからない。

今でも不安に思う。

本当にこれで良かったのかな?って。

パパやシィエお姉さんの言う通り、ママの為にマシンの事を勉強した方がいいんじゃないか?

ケンおじいちゃんみたいな偉い人の言う通り、ジニアスと結婚した方が今後のことを考えたら良かったのかも知れないとか。

ケド、私は私なりの現実的な答えを出したつもりでいる。

ただ、パパが言っていた『自分が本当にやりたいこと』の言葉が引っ掛かかってる。

本当に自分がやりたい事って何なんだろう…

でもパパは言ってくれた。

『見つかった時にまた考えればいい』って。

そんなものかも知れない。

そして、そんなパパの言葉が温かく嬉しかった。

私から見たら、パパは昔からそんなに変わらない。
ちょっとお茶目になったくらいで、昔からめんどくさい話が多く、優しいパパだ。

パパは前に、何をそんなに悩んでいたんだろう?

そしてママは今、何がそんなに辛かったんだろうか…

ママ…

そんな事を考えているうちに、ジニアスの家のそばのバス停に到着した。

…なんかここから長かったよな…

そう思ってたら、でっかい車が横付けしてきた。

「ハーイ!アイハー!」
窓からジニアスママのお出迎え。

唐突!!

「あ!あの、以前は飛行機でありがとうございました!あの!これ!」
とおろおろしながらお菓子の入った紙袋を渡した。

ガチャ
と車から降りてきたジニアスママはジニアスにもシィエお姉さんにも似ていない。

どっしりとした体格が“ビッグママ”という風体を醸し出す。

「あらー!いいのにお土産なんて!!さぁさぁ乗って乗って!」

そう言いながらお土産を受け取ると、ジニアスママはグイグイと背中を押してきて車に乗らされた。

中ではジニアスが申し訳なさそうに「や、やぁ」と言った。

ジニアスいるんじゃん!

「…僕が迎えに行くって言ったら、マムも行くって聞かなくてさ…」

「あー」
そんなカンジはする。

「さぁさぁアイハ!美味しいお紅茶用意したから早く行きましょ!何これ?え!?マドレーヌ!?あなたって最高だわぁ!ささ!ブロイン!早く行ってちょうだい!」

マシンガントーク。

ブロインと呼ばれた運転手は「はい奥様」と短く返事をすると、静かに車を発進させた。

目の前ではジニアスがゲンナリした顔をしている。

「んもー本当久しぶりね!ちょっとぉ元気だった?あら、あなたちょっと痩せたんじゃない?ダメよぉたくさん食べなきゃ!今日はね、ライトにサンドイッチにしたの!いや私はね、せっかくアイハが来るんだから豪華なフレンチにしようと思ったんだけどね、あの子が軽くでいいって言い出すからぁ。本当はアイハもフレンチが良かったわよねぇ?今からでも大丈夫よ!変えようか?」

ぉぉ…相変わらずグイグイくるなぁ…あの時は初めての飛行機でテンション上がってたケド、素でこれはちょっとキツイな…
いやいや、せっかくおもてなしくださっているのだ。失礼な考えはよそう。

「マム…アイハが困ってるだろ…」

「あ…そんな事ないです。フレンチもいいですよね」

「でしょう!ジニアス!料理長に電話してちょうだい!フレンチに変更よ!」

あわわ…!余計な一言を言ってしまった!

ジニアスがマジで!?みたいな顔をしてる!

「あ…いや…!でも私、今日はサンドイッチな気分でした!サンドイッチが好きすぎてヤバいんです!」

「あら!そうなの!?うちのサンドイッチは最高よ~!シェフがね!いいのが揃ってるのよ!それにねぇ…」

セーフ!

うかつなことは言えませんな…ジニアスママに掛かったら強引にジニアスと結婚させられてしまいそうだ。

むむ…気を付けよう…

それからは無難に「はい」と「へぇ」と笑顔を繰り出してその場を乗りきった。

ジニアスの顔からは早くも疲労感が漂っている…

うん。わかる気がする。

でもなんだか私、好印象なのカナ?

あの時会っといて良かったぁ。

…あの時…?
偶然に…?

違う。

きっと偶然じゃない。

あの飛行機はおじいちゃんが手配してくれていた。

そして私は未成年だし…

その時すでにジニアスがパパに近付くように言われていたとしたら、この不自然な偶然も理解できる。

フフフ…コナンばりの名推理ですな。

息子が近付く方なのに、息子に悪い虫が付かないようにどんな娘なのか見定めてたんだろう。

「ところでアイハ!ジニアスとの式はいつにするんだい?」

…はい?

「マム!それはまだないって話したじゃないか!」

「あれェ?そうだっけ?でもいいじゃない!この子ならジニアスちゃんのお嫁さんにぴったりじゃないか!アタシは大丈夫だから!」

「あの…いや…」

「うちのジニアスちゃんがいやかいアイハ?」

「いや…そういうワケじゃなくてですね…」

「ならいいじゃない!いやぁ、うちのジニアスちゃんにもこんないいお嫁さんが来たら安泰だね!あははははははは!」

カオス!

うん、間違いない。ケンおじいちゃんの血筋っぽい。

お金持ち特有の『言ったことは全て決定事項』的なアレだ。

ジニアスを見ると違う違うみたいな顔をしてる…

ジニアスはそんなこと言わないっぽいケド、押し切られてるカンジだな…

まぁ、決定される前にその件も含めてきちんとお話しせねば…

ジニアスママのマシンガントークが炸裂する中、いつの間にかお屋敷に到着していた。

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