第208話 《キキョウ》47

———————–
彼もアイハも居なくなってしまった…

私はなんの為に生きてきたんだろう…

彼を精一杯支えたこの何年間に何の意味があったのだろうか…

家族を失い…
結局私なんて生きている価値は無いんだろう…

ただ…アイハ…
あの子の為だけに生きなくては…

あの後に私が自殺をして、あの子が悲しむことのないように…

ただ息をして生きていこう…

感情があるから傷付くんだ…

だから私には感情なんていらない…

深く…
深く…

心の奥底に深く…

感情が水面に顔を出すことの無いように、ただ息をして生きよう…

公園のベンチに腰を掛けて、私は一人佇んでいた。

彼とアイハと何度も訪れた思い出の公園に私はいた。

何度も死のうと思った。
夜になるのが怖くて、震えながら何度も暗闇を耐え忍んだ。

目が覚めても、そうでなくてもアイハのことを想い続けた。

私の全てが悪かったのか?

私はまだまだ足りなかったのか?

私には私の思う幸せなんて、考えることすらおこがましいのか?

ただぼんやりと周りの家族を眺めながらそんなことを考えていた。

「やぁ、今日はいい天気だね」

隣で誰かが話し掛けてくる。

「えぇ…とってもって…ラブイズ!!」

「久しぶりだねキキョウ」

「えぇ…でもあなた、二度と私には会いたくないんじゃなかったの!?」

「あぁ…いや…私が悪かったよ…ごめんなキキョウ。傷付けてしまって…全ては私のエゴだったんだ…キキョウ…君は悪くない。私が悪かったんだよ…」

「いいえラブイズ…私も悪かったわ…本当はあなたのことを考えていた振りをしていたの…本当に私、わがままだったわ…自分の考えをあなたに押し付けてばかりで…」

「でも君は私のことを考えた上でのことだったんだろう?私がわがままだったんだ。

キキョウ、いたずらに君を傷付けたのは私の方だ」

「いいえラブイズ…私が悪かったのよ…ごめんなさい…ごめんなさいラブイズ…」

「うん…まぁ…お互い謝ったことだし、またやり直していかないか?」

「でも…私がいると、あなたは幸せになれないでしょう…?」

「あぁ…“幸せ”か…
何を持って“幸せ”と思うかだと今は思うんだ…
君のせいじゃない。

私の心が“幸せ”に思えるかどうかだと思うんだ。
ようは幸せか不幸せかは自分の心が決めることだってようやく気付いたんだよキキョウ。

だから…だから君は悪くないよ…

君は最後まで私とアイハのことを見捨てなかったじゃないか…

きっと、その気持ちこそが“真実の愛”なんじゃないかな?

今、私はそう、思うんだ…」

「ラブイズ…」

「さぁ家に帰ろうキキョウ。話したいことは山ほどあるんだ。君はきっと信じてくれないだろうけどね。そうそうアイハに彼氏が出来てさ…」

夕暮れの公園を彼と二人で歩いた。

彼は嬉しそうに私の顔を見て笑ってくれた。

彼と手を繋いで歩いた。

たくさんの記憶が彼の手を通じて流れ込んできた。

やがて手と手が繋がって、光を放っていった。

その光は段々と大きくなり、私と彼を包み込んでいった。

柔らかな温かい光に包まれていく中、彼の声が聞こえたような気がした。

(キキョウ…・・・・・・・…)

———————–

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーリンク