第209話 《アイハ》58

パパとママのマシンの中から光は放たれていた。

「ジニアスくん!二人の手がナノマシンによって分解されて始めているわ!マシンを停止しなくてわ!」

「なんだってッ!?どういうことなんだッ!?今お義父さんが入ったばかりのマシンは停止出来ないぞッ!!」

「ものすごいスピードで身体が分解されている!あぁ!もう肩まできたわ!間に合わない!」

「パパ…ママ…」

「な…!テムズちゃん!俺達はどうしたらいいんだッ!?」

「わからない!わからないわ!あぁ!足からも段々消えていく…!」

光を放ちながらパパとママはマシンの中で消えていった。

ジニアスやテムズさん達が慌ただしく動いている中、私はその光景をずっと見続けていた。

モニター越しにパパとママの顔が光に包まれて顔の輪郭から消えていく…

その時、二人とも安らかな、穏やかな顔をしていた。

「パパ…ママ…」

パパとママが消え去ると、研究室には一時の静寂が訪れた。

ただ機械の音だけが虚しく響いていた。

ブゥン

その時、反対側にあるナノマシンAIシステムのモニターからふいに音が鳴った。

振り向くと、モニターの中ではパパとママが映っていた。

「パパ…!ママ…!」

『あー、みんな居るかい?こっちの声は聞こえているのかな…?誰か、ウェブカメラでいいから設置してくれないか?』

「自分!持って来るッス!」
ジローさんが慌ただしく部屋の外へ掛けていった。

『さてみんな、びっくりしていると思うが、どうやら私とキキョウはナノマシンAIに取り込まれた形になった。もちろんそれを証明する手段はない。ひょっとしたら私達はナノマシンAI自体が見せている幻かも知れない。ただ、“魂の世界”とはこの世界を言うのかも知れないね。私とキキョウは別々の意識も持ちながらも、お互いの意識を共有している。心と感情はナノマシンAIによって感知反応されているようだ。ここには老いも時間も無い。きっと私達はこのままで居続けることが出来るだろう』

バタン!
「ウェブカメラ持って来たッス!」

「ジローさん、貸してください」
ジニアスがメインモニターにカメラを取り付けると、ママはびっくりした様子でこっちを見た。

『あぁアイハ…!見えるわ…!随分大きくなって…!あなた…!』

『あぁ…みんな…見えるぞ…アイハ…来ていたんだね…』

「パパ…」

『急ですまなかったねアイハ…
キキョウ…アイハだよ…』

『アイハ…』

「ママ…!」

『今回こんなことになって本当にごめんなさい。
ママね、あの時は自分がもう必要の無い人間なんだなぁって思っちゃったんだ…でもね、今は大丈夫。パパが迎えに来てくれたから…アイハ…辛い想いさせてごめんね…』

「いいの…いいのママ…!」

『…ジニアス、近いうちに集音器も取り付けてくれるかな?君たちの声が聞こえないんだ』

「わかりました…お義父さん…」

『…アイハ。
もう淋しくないよ。
いつでもパパとママに会える。
ただ、パパはしばらくママとゆっくりお話しをしたいんだ。だから何かあったらいつでもここで呼び出しておくれ。

だから一旦はこれでオフにするよ。

アイハ…ありがとう。君はたくさんの愛をパパとママに教えてくれた。
これからは、新しい愛をたくさんの人達と育みなさい…

じゃあ、またね…』

『またねアイハ…』

プツンー

「マジか!ラブイズさん電脳世界に行っちまったゼ!」

「クールだよなぁ!」

「もう!あなた達!アイハちゃんの気持ちも考えてあげてッ!」

「いいんですテムズさん…ねぇジニアス」

「なんだいアイハ?」

「結婚しよう」

「はい喜んで!…ってそれは僕に言わせてくれよ!」

「散々今までプロポーズしてくれたじゃん!」

「いや、そうだけどさ…何となくだよ!」

「何それ?意味わかんない!?けどまぁ、これからも宜しくね!」

「こちらこそ宜しくお願い致します」
ペコリ

「あら、宜しくお願い致します」
ペコリ

「アイハー!」

「ジニアスー!」

ぎゅうぅぅぅ

「子供は何人欲しい?」

「たくさんかな!」

「おめでとうジニアスくん、アイハちゃん」

「ひゅうひゅう!見せつけてくれるねぇ!」

「二人とも良かったな!」

「ヘヘへ…ありがとう…じゃあみんなでジニアスの家に報告に行こうか!」

「アイハ…いいのかい…?今はこんなことになったから、少し落ち着いてからの方がいいんじゃないか…?」

「ん?いいのいいの。パパとママは宜しくやってるみたいだし、なんだかまた会えるみたいだしね!それより結婚は勢いっていうじゃない?」

「アイハちゃん…でも私…マシンの様子を見ないと…」

「いいのいいの!二人でゆっくりさせてあげよう!じゃあまたね!パパ!ママ!さぁ行こう!」

そうしてみんなを連れてまたジニアスの家に行った。

パパ、ママ。
私にはもう新しい家族がいるんだ。だから心配しないで二人で楽しく過ごしていてね。

私はこっちの世界で生きていきます。

またみんなで一緒に暮らせる日を楽しみにしながら…

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーリンク