第211話 《最終話》

今日は家族みんなで公園にお出掛けの日。

「ねぇおかあしゃん、おとうしゃんまだこないの?」

「研究室に寄ってからだからね。もう少しだよ」

「はやくこないかなぁ…」

「ふふふ、みんなで来るから先に公園行って待ってようか?」

「うんいくー!おかあしゃんはやくはやくー!」
タタタタタタタ…

「こら待ちなさいハルタ!靴下まだー!」

「こうえんではくー!」

「やれやれだね?せっかちなのはおじいちゃんに似たのかしら?」

パパとママの写真を見ながらそう呟いた。

あれ?うちの息子殿はもう車に行っちゃったのかな?

サンドイッチの入ったバスケットを持って、薄手のストールを羽織りハルタを追い掛ける。

…ママも確かこうしてたよな?

くくく…と笑いながらハルタをチャイルドシートに乗せて公園に走り出した。

「じゃあ公園にレッツゴー!」

「ごー!」

二人であの公園に向かう。

パパとママと行ったあの公園。

今はハルタの格好の遊び場になっている。

「きゃあああああー!」
矯声を上げながらハルタは車から飛び降りると公園の中へ駆けて行った。

「こらー!走らないー!」

敷物とお弁当を持ってハルタを追い掛ける。

なんだか最近いつもハルタを追い掛け回している。

しばらく公園内で走り回るハルタを見ていると、ジニアスが大きいバスケットを持って現れた。

「悪い悪い遅くなって」

「いいのよ〜パパ達は?」

「お〜い着いたか〜?」

バスケットの中からパパの声が聞こえた。

「あ!すみません」

急いでジニアスはバスケットを開けると中から小さなパパとママが現れた。

「まぁ今日はいい天気ね」
ママが辺りを見回している。

「おーい!ハルター!」
パパが大きく手を振ってハルタのところへ走り出す。

「あ!じったん!」
ハルタがパパを見付けると、優しく手のひらに乗せた。

「大きくなったなぁハルタ!」

「じったんが小さいんだよ」

なんだか二人とも楽しそう。

あれから数年して、ジニアスはナノマシンシステムと3Dプリンターを掛け合わせ、現実世界にパパ達を連れ出す方法を確率した。

まだ10分の1のサイズしか成功していないけれども、パパとママを連れて、こうして家族で出掛けることが出来るようになった。

「ハルター!お父さん来たからお昼にしよー!おじいちゃん連れてきてー!」

「はーい!」

「あ!こら!ゆっくりでいいから!」

ハルタの手の上でパパはよたよた落ちそうになっている。

ようやくハルタが辿り着くと、パパはフィギュア故の無表情さを無くすように、一生懸命手振り身振りでビビり加減をアピールしていた。

「…ったくハルタならやんちゃくれだな!」

その声色は明るい。

その姿を見て、ママも「あなたは大げさなのよ」とパパに言っていた。

パパは体育座りをして「淋しく佇むGIジョー」とかやってはしゃいでいる。

なんだかんだで現実世界は楽しいみたいだ。

「なぁジニアス…」

「なんですかお義父さん」

「視覚と聴覚と発声器以外にも、早く味覚を完成させてくれよ」

「あー。私も何か食べたいわぁ。ジニアス君宜しくー」

「お義父さん、お義母さん味覚は難しいんですよ…まだちょっと待ってください」

「ハルタ!聞いたか!お父さんな!おじいちゃんにご飯も食べさせてくれないんだぞ!この鬼婿!」

「鬼婿。」

「おにむこ?」

「ほら〜パパもママもハルタ真似するから止めて〜」

「あぁごめんごめん。まぁなんだ、家族が一緒だっていうのはいいな!」

「そうねぇ…あなたなんて昔、アイハの縄跳び真剣になってやっていたわよねぇ」

「あぁパパ、やってたやってた」

「この身体は飛ぶのは難しいな…ジニアス!」

「もぉ〜わかりましたから時間くださいよ〜!」

「おばあたん、たべる?」

「あら、せっかくハルタがくれるなら食べようかしら?あむあむあむあむ〜」

ぐぃ〜とハルタが卵のサンドイッチをママに押し付ける。

「あぁ!あぁ!目がぁ目がぁ!」

某ム〇カのようにうろたえるお人形のようなママの姿が面白い。

「あ〜ぁ、卵の油でモニターが汚れちゃったよハルタ〜」

「おとしゃんふいてあげて」

「はい…お義母さん見えます?」

「ぼんやりしてる…」
無表情なはずのママの顔が、ちょっぴりブルーに見える。

「あぁ〜仕方ない、今日はこんなところで帰りますか」

「なぬ〜!ジニアス!まだ来たばかりじゃないか!」

「お義父さん。バッテリーも持ちません。バッテリー切れたら魂どうなるかわかんないですよ」

「む…むぅ…仕方ない…ハルタ!またな!またおじいちゃんと遊ぼうな!」

「じったんまた〜」

「ねぇアイハ…?」

「ん?なぁにママ?」

「あなた…今は幸せ?」

「もっちろん!すっごい幸せだよ〜!」

「そう、良かったわ…じゃあまたね!」

「うん。ママ、また研究室に会いに行くね!」

そうやってパパとママは帰って行った。

「おかあしゃん?」

「なぁにハルタ?」

「ボク、もっとじったんとばあたんとあそびたいなぁ…」

「そっかぁそうだよね。じゃあお父さんに頼んでもっと遊べるようにしてもらおっか!」

「ううん、ボク、じぶんでおじいしゃんたくさんうごけるようにつくってあげるよ!」

「ふふふ…そうかぁ、それじゃあお願いしようかな!」

「うんー!」

《ハルタ(遥太)・ディーン・劉》
シン・ジニアス・劉の長男。父の後を継ぎ、人工アセンションの人達を現実世界に投影させるシステム確立し世界に拡める。

たくさんの人達が関わり合い、たくさんの人生が彩られていく。

人生とは、前向きになったり、後ろ向きになったり、まるでやじろべえのようにゆらゆら揺れている。

たくさんの色々な人生があっていいと思う。

たくさんの人の思い、想いが、たくさんの人の人生に暗闇を与え、輝きを与えてくれる。

完璧な人なんていない。

だから人は助け合って生きていくんだと思う。

相手を傷付ければ同じ分だけ自分も傷付く。

それならば、お互いに労り合い、生きていった方がいいと思う。

何かをしてもらったらありがとう。

何かをしてしまったらごめんなさい。

人は生きているのではなくて、たくさんのものに生かされている。

それに気付くことが出来れば、たくさんの人生に幸せが訪れる。

そうして幸せは次の世代へ紡がれていく。

私はそう思う。

そして、そう生きていこうと今日、また思った。

願わくば誰かこの物語を見た人が、よりよい人生を送ることが出来ますように。

アイハ・劉より
まだ見ぬあなたに愛を込めて

《end》

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーリンク