《エピローグ》

ケンおじいちゃんのお屋敷に着くと、みんな一つの部屋に集まっていた。

私達が着くと、シィエお姉さんは真っ青な顔で私に話し掛けて来た。
私は「大丈夫ですよ」とにっこり笑って、パパとママのことをみんなに報告した。

みんな、複雑そうな顔をして私の顔を見ていた。

「やだぁ、みんな!しんみりしちゃって!いいの!私、パパとママが仲良くいてくれたらそれでいいんだ。だからそんなに心配しないでください。みんな、たくさんの力を貸していただいて本当にありがとうございます。それと…」
チラリとジニアスの方を見る。

「あ、あーあー。えーっと、僕達、結婚します!」

みんなの目がまんまるくお皿になった。

「きゃーッ!孫孫!」
ジニアスママが叫び出したのを皮切りにみんなからたくさんの温かい言葉が次々に溢れ出した。

「おめでとうアイハちゃん!ジニアス!幸せにするんだよ」

「おぉ!ようやく約束を果たす気になったんじゃな!」

「改めておめでとうアイハちゃんジニアスくん」

「へへ!本当にめでてーな!」

「タローおまえ泣いてんのか?」

「バカヤロウ!汗だよ汗!」

ブシおじいちゃんは一番奥の席で顔を真っ赤にしながら、あのヘンテコな笑顔で涙を流して笑っていた。

それからなし崩し的にまたパーティーが始まった。

「アイハ!わしが生きているうちにひ孫を頼むな!」

「いやだぁ、ジニアスママみたいに!」

《剣・劉》
華僑の大老として影から東アジアをまとめた立役者、享年101歳。

「あら!?やっぱり子供は早い方がいいわよ!私は二人だけだったけど、あなたは若いから7人はイケるわよ!」

「ジニアスママ…7人ですか…がんばります!」

《蘭・ジーナ・劉》
劉ファミリーのビッグママ。世界的に有名な服飾メーカーのオーナーとしての顔も持つ。数多くの孤児院に出資しており、たくさんの人から愛された心優しいみんなの母親。

「アイハちゃん、私、あなたを傷付けてばかりだったわね…」

「いいんですそんな…テムズさんが居てくれたから、ママもパパも命を落とさずに済んだのかも知れません。本当にありがとうございます」

《テムズ・アルバナ》
その後、ナノマシンシステムの世界的権威として名を知られるようになる。一方、タロー、ジローと3人の共同生活を営み、それぞれの子を持つ。新しい家族のライフスタイルとして注目される。

「タローさん!ジローさん!パパとママの為に本当にありがとう!」

「まぁあの人からの頼みじゃなぁ…なぁジロー?」

「おぅ、断れねぇよ」

《タロー・カブラギ》
《ジロー・リツキ》
テムズ・アルバナの内縁の夫達。陰ながら彼女をサポートしつつ、育児にも積極的に参加。孤児院育ちの経験を活かし、共著『孤児院育ちの育児日記』がベストセラーになる。テムズ・アルバナ監修

「アイハちゃん、ジニアスを宜しく頼むね!あと、いつでも遊びに来てね」

「シィエお姉さん。本当にありがとうございます。シィエお姉さんのおかげで私、本当にがんばれました。これからも宜しくお願い致します」

『シィエ(雪)・マリア・劉』
劉ファミリーの総帥。独身を貫き一人でファミリーの牽引を担う。彼女の影の働きで、東アジア難民は過去最小に留められている。地域の発展、主にインフラの整備に力を発揮した。

「ブシおじいちゃん!」

「おぅ…」

「大好き!」
ぎゅううぅ

「…ぉぅ」

《葉内武士》
その後日本には戻らず、ジニアスの師匠として生涯マシンのメンテナンスに携わる。享年88歳(マシンに収納される)

———————–
「おじいちゃん、おばあちゃん、元気してた?私、結婚するんだよ!?」

「おぉ…キキョウ…ラブイズと遂に…良かった…本当に良かった…」

《斎藤健次郎》
ナノマシンシステムの開発者としての世界的権威。晩年は自ら設立した老人介護施設で静かな余生をおくる。享年86歳(マシンに収納される)

《マリー・リリアナ》
斎藤博士に生涯を掛けて愛された女性。最期の日を博士と一緒に迎えたのち、マシンに収納される。享年83歳

———————–

「うーん!うーん!いだああああああいッ!!ジニアス!ジニアス!いだああああああいッ!!」

「頑張れ!頑張れアイハ!もうすぐだ!もうすぐ産まれる!」

《シン(真)・ジニアス・劉》
ナノマシンシステムの権威としてその名を知られる。子煩悩、恐妻家。ナノマシンシステムをさらに発展させ、医学に多大な貢献をする。また、ラブイズらの収納されたナノマシンシステムに3Dスキャンを搭載し、現実に投影されたAIロボットの作成に成功。これにより人類は死を克服されたとした。いつでも亡くなった人の記憶に会うことの出来るこのシステムは“人工的アセンション”と呼ばれ、今でも世界中の研究対象とされている。

「うーん!うーん!えいっ!」

「おぎゃぁ!おぎゃぁ!」

「産まれたァ!男の子だぞアイハ!やったァ!産まれたァ!」

「うーん、もうダメ」

「おぎゃぁ!おぎゃぁ!」

「ハァ…ハァ…やった…」

《アイハ・劉》
ラン・ジーナ・劉の後を継ぎ、孤児やネグレストの子供達、その親を救う為のNPOを設立する。“新人類の母”として、その人生を愛に捧げた。

そして数年後…

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今日は家族みんなで公園にお出掛けの日。

「ねぇおかあしゃん、おとうしゃんまだこないの?」

「研究室に寄ってからだからね。もう少しだよ」

「はやくこないかなぁ…」

「ふふふ、みんなで来るから先に公園行って待ってようか?」

「うんいくー!おかあしゃんはやくはやくー!」
タタタタタタタ…

「こら待ちなさいハルタ!靴下まだー!」

「こうえんではくー!」

「やれやれだね?せっかちなのはおじいちゃんに似たのかしら?」

パパとママの写真を見ながらそう呟いた。

あれ?うちの息子殿はもう車に行っちゃったのかな?

サンドイッチの入ったバスケットを持って、薄手のストールを羽織りハルタを追い掛ける。

…ママも確かこうしてたよな?

くくく…と笑いながらハルタをチャイルドシートに乗せて公園に走り出した。

「じゃあ公園にレッツゴー!」

「ごー!」

二人であの公園に向かう。

パパとママと行ったあの公園。

今はハルタの格好の遊び場になっている。

「きゃあああああー!」
矯声を上げながらハルタは車から飛び降りると公園の中へ駆けて行った。

「こらー!走らないー!」

敷物とお弁当を持ってハルタを追い掛ける。

なんだか最近いつもハルタを追い掛け回している。

しばらく公園内で走り回るハルタを見ていると、ジニアスが大きいバスケットを持って現れた。

「悪い悪い遅くなって」

「いいのよ〜パパ達は?」

「お〜い着いたか〜?」

バスケットの中からパパの声が聞こえた。

「あ!すみません」

急いでジニアスはバスケットを開けると中から小さなパパとママが現れた。

「まぁ今日はいい天気ね」
ママが辺りを見回している。

「おーい!ハルター!」
パパが大きく手を振ってハルタのところへ走り出す。

「あ!じったん!」
ハルタがパパを見付けると、優しく手のひらに乗せた。

「大きくなったなぁハルタ!」

「じったんが小さいんだよ」

なんだか二人とも楽しそう。

あれから数年して、ジニアスはナノマシンシステムと3Dプリンターを掛け合わせ、現実世界にパパ達を連れ出す方法を確率した。

まだ10分の1のサイズしか成功していないけれども、パパとママを連れて、こうして家族で出掛けることが出来るようになった。

「ハルター!お父さん来たからお昼にしよー!おじいちゃん連れてきてー!」

「はーい!」

「あ!こら!ゆっくりでいいから!」

ハルタの手の上でパパはよたよた落ちそうになっている。

ようやくハルタが辿り着くと、パパはフィギュア故の無表情さを無くすように、一生懸命手振り身振りでビビり加減をアピールしていた。

「…ったくハルタならやんちゃくれだな!」

その声色は明るい。

その姿を見て、ママも「あなたは大げさなのよ」とパパに言っていた。

パパは体育座りをして「淋しく佇むGIジョー」とかやってはしゃいでいる。

なんだかんだで現実世界は楽しいみたいだ。

「なぁジニアス…」

「なんですかお義父さん」

「視覚と聴覚と発声器以外にも、早く味覚を完成させてくれよ」

「あー。私も何か食べたいわぁ。ジニアス君宜しくー」

「お義父さん、お義母さん味覚は難しいんですよ…まだちょっと待ってください」

「ハルタ!聞いたか!お父さんな!おじいちゃんにご飯も食べさせてくれないんだぞ!この鬼婿!」

「鬼婿。」

「おにむこ?」

「ほら〜パパもママもハルタ真似するから止めて〜」

「あぁごめんごめん。まぁなんだ、家族が一緒だっていうのはいいな!」

「そうねぇ…あなたなんて昔、アイハの縄跳び真剣になってやっていたわよねぇ」

「あぁパパ、やってたやってた」

「この身体は飛ぶのは難しいな…ジニアス!」

「もぉ〜わかりましたから時間くださいよ〜!」

「おばあたん、たべる?」

「あら、せっかくハルタがくれるなら食べようかしら?あむあむあむあむ〜」

ぐぃ〜とハルタが卵のサンドイッチをママに押し付ける。

「あぁ!あぁ!目がぁ!目がぁ!」

某有名アニメのようにうろたえるお人形のようなママの姿が面白い。

「あ〜ぁ、卵の油でモニターが汚れちゃったよハルタ〜」

「おとしゃんふいてあげて」

「はい…お義母さん見えます?」

「ぼんやりしてる…」
無表情なはずのママの顔が、ちょっぴりブルーに見える。

「あぁ〜仕方ない、今日はこんなところで帰りますか」

「なぬ〜!ジニアス!まだ来たばかりじゃないか!」

「お義父さん。バッテリーも持ちません。バッテリー切れたら魂どうなるかわかんないですよ」

「む…むぅ…仕方ない…ハルタ!またな!またおじいちゃんと遊ぼうな!」

「じったんまた〜」

「ねぇアイハ…?」

「ん?なぁにママ?」

「あなた…今は幸せ?」

「もっちろん!すっごい幸せだよ〜!」

「そう、良かったわ…じゃあまたね!」

「うん。ママ、また研究室に会いに行くね!」

そうやってパパとママは帰って行った。

「おかあしゃん?」

「なぁにハルタ?」

「ボク、もっとじったんとばあたんとあそびたいなぁ…」

「そっかぁそうだよね。じゃあお父さんに頼んでもっと遊べるようにしてもらおっか!」

「ううん、ボク、じぶんでおじいしゃんたくさんうごけるようにつくってあげるよ!」

「ふふふ…そうかぁ、それじゃあお願いしようかな!」

「うんー!」

《ハルタ(遥太)・ディーン・劉》
シン・ジニアス・劉の長男。父の後を継ぎ、人工アセンションの人達を現実世界に投影させるシステム確立し世界に拡める。

たくさんの人達が関わり合い、たくさんの人生が彩られていく。

人生とは、前向きになったり、後ろ向きになったり、まるでやじろべえのようにゆらゆら揺れている。

たくさんの色々な人生があっていいと思う。

たくさんの人の思い、想いが、たくさんの人の人生に暗闇を与え、輝きを与えてくれる。

完璧な人なんていない。

だから人は助け合って生きていくんだと思う。

相手を傷付ければ同じ分だけ自分も傷付く。

それならば、お互いに労り合い、生きていった方がいいと思う。

何かをしてもらったらありがとう。

何かをしてしまったらごめんなさい。

人は生きているのではなくて、たくさんのものに生かされている。

それに気付くことが出来れば、たくさんの人生に幸せが訪れる。

そうして幸せは次の世代へ紡がれていく。

私はそう思う。

そして、そう生きていこうと今日、また思った。

願わくば誰かこの物語を見た人が、よりよい人生を送ることが出来ますように。

アイハ・劉より
まだ見ぬあなたに愛を込めて

《end》

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